多次元世界の住人

乱の多次元世界の住人のネタバレレビュー・内容・結末

(1985年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

はじめて悲劇を観ました。鮮やかで強烈で、何というか不思議な感覚です。

黒澤明作品をちゃんと観るのがはじめてで、第一印象としては色彩がとても鮮やかだなと思いました。構図もとても素敵です。

大殿だけが生き残り、階段を降りる姿は圧巻でした。それ以前に大殿役が力強くて演技に圧巻でした。殿としての威厳と狂ったあとの風貌、見事です。

他の配役も物語全体の流れを見事に作り出している印象でした。二人で抱き合いながら自害する女性と意を決して自害する大奥には力強さを感じます。無名の役者の死が物語を際立たせます。

道化も映えてましたね。狂阿弥。このキャラクターがとてもアクセントが効いてました。山口昌男先生の本を思い浮かべます。日本でもあれほど道化師がいたのでしょうか?

てっきり城が焼かれて1人生き残っておわりかと思えば、その後も続くのかと驚きました。次郎の奥方が戻るところまで、死を微妙に仄めかさなかったのは没入感をうまく引立たせていると感じました。そして三郎の死とともに一気に暗転。末の方もきっちりと死へと消える。最後に映される鶴太郎の姿は何とも言えない情景を映します。わかっていても思わず唸ってしまう、本当に力強い描写です。

構図に関連してイワン雷帝の洋画に見られる三郎と秀虎の構図は見事でしたね...思わずおぉと言ってしまいました。シェイクスピアを下敷きにしているということで、『リア王』はまだ読んだことがないのですが、是非とも読みたいと思わされました。

総合して、はじめての本格的悲劇と時代劇の描写、構図・色彩を評価して星4つとします。他作品も見比べてみたいと思います。