Ricola

スサーナのRicolaのネタバレレビュー・内容・結末

スサーナ(1950年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

天性の悪魔。厄病神にしてはたちが悪すぎるほど、自分の都合しか考えていない。
そんな悪魔でも神に祈ることはある。それで彼女は一時的に神に試されたのかもしれない…と思うほどだ。
ただ、神からの試練を受けたのは彼女だけではなく、一家ごとである。

スサーナという少女は嵐の日に少年院を脱走してなんとかたどり着いた先が、あるお屋敷だった。その家の奥さんの厚意でスサーナは助けてもらったうえに住み込みで働き始めるが、彼女はみだらな格好で家の男性たちを誘惑し始める。


スサーナの誘惑によって、それまで平和だった家を徐々に崩壊へ導くだけではなく、男性陣の使用人ヘススは忠誠心を、息子は勉学を、父親は妻への愛情を試される。
スサーナの肉体は誘惑の道具であり、それを利用してはぶらかすスサーナという人間性そのものが完全悪として、この物語では描かれる。スサーナに同情の余地を与えないくらい、彼女の素性や過去などがほとんど明かされることはない。

スサーナを信じていた奥さんは、彼女の正体を知ると血相を変えて、穢らわしいものとして彼女を扱うようになる。スサーナの本質を最初から見抜いていたのは、使用人のお婆さんだけだった。

嵐の如く地獄へと引きずりこもうとした悪女は嵐とともに現れ、彼女が去った後は穏やかな気候と元の平和な生活が再来する。
絶対的な悪とそれによってもたらされる試練が、天からのものだと思わされる。
聖書のおしえと展開に沿ったような作品であり、ルイス・ブニュエル作品の根本があらわれた作品だと思った。
Ricola

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