よしまる

噂の二人のよしまるのレビュー・感想・評価

噂の二人(1961年製作の映画)
4.4
 映画「オードリーヘプバーン」公開記念レビューその4なり〜

 これはオードリーの映画というより、ボクにとってはまさしくシャーリーマクレーンの映画。
 この当時のシャーリーマクレーンがめちゃくちゃ好きで、もういかにシャーリーが可愛いかを長々と書きたいくらいなのだけれど、ここはグッとこらえて笑、冷静なレビューを心がけよう。

 マーサ(オードリーヘプバーン)とカレン(シャーリーマクレーン)は学生時代からの仲良しで、2人で私設の寄宿学校を経営している。ここでのオードリーは王女でもお嬢様でもない、キャリアを積んで自立した女性。身長が高くピンと背筋を張ったオードリーの「出来る女」感がすごくって、男女関係なく惚れてしまう。

 だからというわけではないがマーサにはフィアンセがおり、結婚を決めると同時にカレンとの仲がギクシャクし始める。あれ?これってまさか?
 普通ならその彼氏に横恋慕しそうなものだけれど、そうではなかった。

 まだ60年代が始まったばかり、ヘイズコードの厳しかったハリウッドでは同性愛や自殺なんてものは到底映画で表現できるものではない。
 「ベンハー」で2度目のオスカーを獲得した翌年、ウィリアムワイラーは25年前に自身が監督した「この三人」をリメイクした。オードリーとは「ローマの休日」以来8年ぶり。
 大作を次々と発表していたワイラーが、このようなこじんまりとしたお話を手がけるのは違和感があったけれど、観てみるとその斬新な語り口、ヘイズコードを厭わず巧みに深層をえぐり出す演出には脱帽させられる。それでも同性愛を描いたシーンや、その是非を問う裁判シーンなどはすべて削られてしまったとのこと。

 また、画面の雰囲気もとても白黒とは思えないほどモダン。次作の「コレクター」と共に、60年代初期とは信じ難いほどに70年代を先取りしたセンスを堪能できる。いやほんとこの監督の才能凄まじい(今さら)。「この三人」のほうも名作らしいのでぜひ観なくてはと思いつつ何年経ったことかw

 原題は「子供の時間」。生徒のうちのひとり、こまっしゃくれた女の子のワガママな「ウソ」により、二人の教師の生活や学校の存在そのものまでが脅かされる。
 「悪い種子」にも負けない子供怖い系の話でもあり、もちろん良質のサスペンスでもあるのだけれど、悪い噂を立てられたオードリーとシャーリー、という図式など想像もできない「噂の二人」という邦題。

 内容とはてんでかけ離れたタイトルなのに、間違ってはいないし、むしろ良い意味で裏切られたとさえ言える。
 なんかお洒落な二人によるシスターフッド映画?と思ったあなた、ぜひ騙されて観てみてね。