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噂の二人のKientopp552のレビュー・感想・評価

噂の二人(1961年製作の映画)
5.0
 1961年上映の本作の原作は、女流劇作家Lillian Hellmanによる舞台劇『The Children's Hour』(1934年作)であり、本作の脚本も、最初は彼女が書いていた。ただ、同年に彼女の約30年来続いていた関係のパートナーであった、ハードボイルド・推理小説家の第一人者の一人Dashiell Hammettダシール・ハメットが亡くなったことがあって、彼女は、本作のための脚本書きから降板したようであった。本作の英語原題も、舞台劇と同じであるが、本作のストーリーの何を以って、「子供達の時間」という題名が付くのか、映画を観終わった後も筆者には見当が付かなかった。

 舞台劇の内容は、1809年という時代設定とスコットランドという場所の設定以外は、本作のストーリーとほぼ同じようであるが、ウィキペディアによると、作者のL.Hellmanは、その作意は、ストーリーに登場する女子生徒Mary Tilfordを、生来的に自分に都合がよくなるように事柄を組み合わせて「嘘」をでっちあげて、優位に立とうとする、いわば、「小マキャヴェリ的人間」として、描ききることにあった、と言う。ゆえに、三幕ものの、この舞台劇では、二幕目が終わったところで、Maryは、勝ち誇ったようにその座に安泰に座し、三幕目では、このMaryにおとしめられた二人の女性教員KarenとMarthの、社会的名声の失墜後の情況が淡々と描かれると言うのである。

 実は、本作の監督William Wyler(フランス・アルザス地方生まれのドイツ系ユダヤ人)は、上述の舞台劇がヒットしたのを受けて、同じくユダヤ系アメリカ人のL.Hellmanの脚本化の下、1936年に、この舞台劇を映画化している。ただ、レズビアンのテーマを含んでいる内容を、清教徒主義のUSAでそのまま映画化する訳にもいかず、映画化題名の『この三人』に違わず、Karenの恋人のJoeにMarthaも恋してしまうという「三角関係」のメロドラマに仕立て上げたのであった。尚、この映画化の際には、Martha役を演じたのが、本作でMarthaの叔母Lily役を演じたMiriam Hopkinsであった。中々粋な配役である。
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