よつ

絞死刑のよつのレビュー・感想・評価

絞死刑(1968年製作の映画)
3.6
『戦場のメリークリスマス』の大島渚監督が死刑制度を強烈なブラックジョークを交えながら描く。

冒頭、日本人の7割が死刑制度に賛成というデータを示し、「しかし実際の死刑をご存知だろうか。ではその様子をご覧に入れよう」と絞首刑の流れを詳らかに説明する。

婦女2人を強姦殺人した死刑囚Rの絞首刑を映しながら説明するが、驚いたことに長時間首を吊ってもRが死なない。
やがてRは意識を取り戻すが、自分が何者かも分からない心神喪失状態に陥る。
そこで拘置所長らは再度刑を実行するため、Rに事件の記憶を思い出させようと事件を再現する小芝居を始める。

教誨師や法医などの脇役もキャラや設定が作り込まれてて良かった。
中盤まではコミカルで面白かったけどイマジナリーシスターみたいのが登場してから全くついていけなくなった。
あとゲイを笑いのネタにしているのも時代を感じた。劇場で笑ってるの初老以上の男性だけだったし。

本作は1958年の小松川事件を題材としている。事件の背景には在日朝鮮人への差別や貧困問題があったとし、文化人らによる助命請願運動が高まった。
なかでも被害者遺族のコメントが凄まじかった。
「これまで、日本人は朝鮮人に大きな罪をおかしてきました。その大きな罪を考えると娘がこうなったからといって、恨む筋あいはありません。もしも珍宇君が減刑になって出所したら、うちの会社にひきとりましょう」
しかし、遺族のこのコメントは世間から大バッシングを受けることになる。
「お前は娘を殺されたのにみすみす朝鮮人を生かすつもりか」と。
それが影響したのかは分からないが、被害者の父は1年のうちに亡くなり、判決の行く末を見届けることは叶わなかった。
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