8Niagara8

絞死刑の8Niagara8のレビュー・感想・評価

絞死刑(1968年製作の映画)
4.0
かなりどぎついブラックコメディ。
と言いつつも、この世界の歪みを看破している辺りは流石である。

映像はかっこいいし、長回しの見応えがある。
ただいささか冗長さを感じ、メッセージ性はかえって薄まったが、終盤の説得力は確かか。
あらゆる点においてメタ的な視点が擁立されている。
コメディ要素をうまく利用し、逆説的なメッセージが展開される。

小山明子の存在がある種キーとも言え、やはり存在感すごい。
日本帝国主義の抑圧と死刑制度の不完全性は国家の輪郭をぼやけさせるものである。
戦争と法治、それぞれ国家としての責任の二律背反的要素はありつつも、個人の罪は絶対的なものであろう。

Rのアイデンティティの欠如は腑抜けに映る。実在と夢想は相容れないながら、その混濁は人間の弱さである。
しかし、ここではその弱さはなるほど朝鮮民族への迫害の結果としても見られる。
死刑が文明的で、理性的な解決であるのかは未だに残存するこの国において残念ながら普遍性を帯びている。
敢えてこれらをないまぜにするのは本当に見事である。

これほど存在が不確かな日本国旗もない。
ショッキングなビジュアルで、極めてストレートな文脈の終盤である。
極端なまでに差別的な日本人だが、これにより可視化されるは差別そのもの。
これらは明らかに戦争を含めた現代日本の歩んだ道なのだろう。
8Niagara8

8Niagara8