たけちゃん

潜水艦イ-57降伏せずのたけちゃんのレビュー・感想・評価

潜水艦イ-57降伏せず(1959年製作の映画)
4.0
散る桜 残る桜も 散る桜……


松林宗恵監督、特技監督:円谷英二 1959年製作
原作:川村六良、脚本:須崎勝弥・木村武
主演:池部良、三橋達也、平田昭彦


勝手にお知らせシリーズ「今日は何の日」
本日は8月15日「終戦記念日」ですね。
毎年、この時期には戦争映画をレビューしたいと思っていますので、今年も1本選びました。
最近、とある理由(下のレビューに書きました)で潜水艦映画が観たいなぁ…と考えていたのでこちらをチョイス。「潜水艦イ-57降伏せず」です。
これは実話ものではなく、フィクションです。

あと久しぶり、おなじみのタグ"潜水艦映画にハズレなし"シリーズも兼ねています(ˆωˆ )フフフ…







さて、映画です。
終戦間際の6月
日本軍は各地で敗走を余儀なくされ、敗戦濃厚
3月には米軍が沖縄に上陸
4月7日には戦艦大和が轟沈
6月中にはほぼ沖縄も陥落
残すは日本本土での戦闘というタイミング

そこで劇中の話となります。
イ-57艦長の河本少佐がマレーシアのペナン基地に呼ばれ、軍司令参謀の横田少佐から極秘任務を通達される。それは日本の戦争終結、早期講和に向けて外交官を輸送するという内容であった……


実際にこうした話があったかはさておき、軍事作戦中の、特に潜水艦という特殊な環境に外国人の外交官とその娘が乗船するという話は面白いですよね。
艦長や船医は英語に堪能で、艦内でも英語が少し使われたりするのは少し、ん?っとなりますが、軍の規律と民間人の対比、潜水艦での過酷な生活など要所要所面白いです。



オープニングシーンは"回天"ですね。
"回天"とは人間魚雷とも呼ばれる特攻兵器です。
本来の魚雷を改造し、人間が乗り込んで操縦することでその精度を上げた、まさに人命を軽んじる太平洋戦争の末期的兵器。

イ-57のモデルとなった伊五十四型潜水艦は、伊号第五十四潜水艦、伊号第五十六潜水艦、伊号第五十八潜水艦の三隻が就航し、実戦に参加した潜水空母です。さらにこれら三隻は主として"回天"を用いた作戦を実行したようで、それを踏まえての冒頭シーンです。
イ-54とイ-56は作戦中に撃沈されますが、イ-58はアメリカ軍の重巡洋艦インディアナポリスを撃沈し終戦を迎えるのですが、その後アメリカ軍により処分されました。それ故にイ-57のモデルはこの伊五十八潜水艦と推察しています。

実は、この処分された伊五十八潜水艦と思われる船体が2017年に長崎県の五島列島沖で発見されたというニュースを見ました。なんと、縦になり海底に突き刺さった姿で残っていたらしい。これはYouTubeでも見られます。そのニュースを見たことで、今回、この映画を取り上げようと思ったんです(^-^)/


撮影で使われた潜水艦は、撮影当時、日本の海上自衛隊が唯一保有していた"くろしお"を用いています。よく協力してくれましたよね。その勇士は甲板シーンなどで見ることができます。

監督の松林宗恵さんは海軍少尉として実際に太平洋戦争に従軍されていますし、艦長役の池部良さんも陸軍少尉として従軍し、戦地に向かう途中、乗っていた輸送船が敵潜水艦に撃沈され、10時間泳いで救助されたというのですから、すごいです。終戦を戦地で迎えたようですが、よく生き残られた。

そんな戦争経験者も含むキャストで、こだわりも強かったのではと思います。フィクションですから余計ですが、乗艦した外交官親子の会話に反戦への思いが強く現れていましたよね。

「日本人だって平和が欲しい
ただ、それが言えないのだ」
「生きてください
戦争が終わったら会いましょう!」

軍人なら絶対に言わなかったであろうセリフを2人に言わせたのは上手いと思いました。


ラストシーンが本当に胸に残ります。
「ゴジラ」から5年後に撮られた今作は日本版「Uボート」とも言える作品で、娯楽性も高いのですが、反戦映画としてもよくできています。観るチャンスがあれば是非どうぞ!