垂直落下式サミング

関東緋桜一家の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

関東緋桜一家(1972年製作の映画)
2.5
東映任侠路線の華としてヒロインを演じ続けた藤純子の引退記念と銘打って、映画界での育て親であるマキノ雅弘監督がメガホンを取り、藤山寛美や片岡千恵蔵まで駆けつけてオールスターが共演した作品。
だが、東映任侠映画としては淡々とした凡作といわざるを得ない。雑なオールスター作品にありがちな、それぞれの出番を作るためのエピソード過多で散漫な作品となってしまっている。
この映画の藤純子のキャラクターは、鳶職の女組頭というヤクザなのかカタギなのか中途半端な立場であったのがよくなかったかもしれない。
その他、共演者たちにも、主役級に均等に見せ場を割り当てようとした結果、やはりそれぞれの出番が薄く、誰得オールスター映画のテンプレートに当てはまってしまっている。
脇を固める人たちの扱いも雑。若山富三郎はさすがに簡単に死にすぎだし、嵐寛寿郎はいつの間にか死んだことになっていたし、菅原文太に至っては途中から物語上から消えるのに、死んだのかどうか言及すらされない。
悪役の遠藤辰雄も、南田洋子を女郎屋に売り飛ばしちゃうぞなんていうが、この悪事に金銭的な妥当性がないため、単に観客の憎悪を集めるためだけの置物のような敵役設定にみえてしまう。
いや、いやいや、これはあんまりじゃないか。
この時期の東映はオールスター映画をやり過ぎて、同じ顔ぶれの役者がよく似たようなストーリーに組み込まれているので、各作品ごとの個性が薄く感じる。高倉健か、鶴田浩二か、藤純子か、そこには誰が主人公であるかという違いしかない。
であるなら、やはり彼女の引退作は『緋牡丹博徒』シリーズであるべきだったと思う。