りょう

キツツキと雨のりょうのレビュー・感想・評価

キツツキと雨(2011年製作の映画)
4.1
あぁ沖田修一監督作品、好き、って思える作品でした。冒頭、役所広司に古舘寛治が木を切るのをやめるように言うシーンで、何回言っても役所広司が「はい?」って聞き返すところから掴まれた。役所広司凄すぎる。

とにかくこの映画は役所広司である。映画に出演したことを木こり仲間に言ったらものすごい反応良くて、「歩いて、倒れて、また立って、鉄砲に撃たれるんや」「うおーすげー」のくだりが可愛すぎる。嬉しそうな克さん。その後一人きりの温泉でもゾンビの演技やってみちゃう。

ガサツで人の心に土足で踏み込んでいっちゃう克さんが、自信喪失で逃げ出したい映画監督の心をどんどん奮い立たせて行く。

少しの自信と勇気が、年上のカメラマンやアシスタントとのコミュニケーションを生んで、だんだん現場の雰囲気が良くなっていく。その過程がすごいよくて、ほっこりする。温泉ではじめは克さんが近くに寄っていって幸一は引き気味だったのに、今度は幸一の方から寄ってくる。

台本に大きく書いた「自分」の文字。必死にもがいて映画を作っていく幸一を見て、克さんも無職の息子の浩一のことを思う。浩一にも浩一なりの葛藤があり、母を早くに亡くして、何をやろうにも自信を無くしていたのかもしれない。

好きなシーンがたくさんあった。味付けのり食べながらの将棋とか、竹槍をつくシーンの撮影で「レール敷いてもいい?」とカメラマンが幸一に提案するシーン、あんみつを二人で貪るシーンなどなど。

自信が持てなくていろんなことがうまくいかない時、そんな時こそ「自分」はどうしたいのか、そしてそれをやってみる勇気が、自分を変える。自分が変わると周りが変わり始める。
そういうことをこれみよがしに主張せず、そっと背中を押すように感じさせてくれる作品でした。自分に自信が持てない時、また振り返って見てみたい。
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