荒野の狼

マスター・オブ・サンダー 決戦!! 封魔龍虎伝の荒野の狼のレビュー・感想・評価

5.0
2006年の映画、見所は、カンフー・空手映画のブーム期の日本の二大スター倉田保昭と千葉真一の対決。二人がアクションスターとして活躍していた頃から30年以上経ってしまっているが、本格的な共演は、本作が最初で最後なので、往年のファンには見逃せない作品。
倉田は1946年生まれなので60歳、千葉は1939年生まれなので、67歳の時の映画ということになる。倉田は香港のカンフー映画で悪役として活躍していたが、ブルース・リーの登場でカンフー映画がブームになると日本に帰国し、Gメン75をはじめとするテレビや映画で善玉ヒーローとしての役が多かった。ファイナルファイト 最後の一撃(1989年、東映)は、格闘家としては年齢的に限界な主人公を演じており、この作品くらいが彼のファイトを見られる最後の作品かなと思ったものである。
ところが、本作では、千葉との闘いでは、善玉の千葉に対して、悪役の倉田という構図のためか、凄味があり、自分より身長の高い千葉の頭部にハイキックをはじめとして蹴り技が炸裂、かかと落としまで見せている。千葉は、キックは全くないが、棒術で対抗、これに日本刀で応じる倉田だが、本来殺陣は千葉の土俵なのだろうが、ここでも千葉を圧倒。やはり悪役になった時の倉田の強さは健在。倉田と千葉のファイトは、エンディングで、特撮なしの実際のスピードのものが見られるが、この部分がもっとも迫力がある。千葉の棒術のスピードなど、本物は、加工しないほうが、かえって迫力があることがわかるので、必見。
本作でアクションシーンが最も多いのは、敵役を演じた倉田の弟子の中村浩二。冒頭のシーンでは1対150の闘いにも関わらず、圧勝。180cmの身長とビルドアップされた肉体で凄味のある長髪は日本版ヤン・スエといいたいところだが、中村は特撮ファンにはウルトラマンティガのスーツアクターとして有名。ウルトラマンであれば、この強さは納得。倉田と千葉とも互角の戦い。
本作の魅力は、特撮のTV出身の若手俳優が怨霊に対抗する7人の若者として出演していること。本来は、この7人が五重塔を登る中で、怨霊と対決していき、最後に残った一人が怨霊のボス松村雄基と戦うという流れが期待されるところ(「死亡遊戯」や「荒野の7人」のような)。しかし、五重塔にたどり着いてからの7人の描き方がぞんざいで、それぞれに闘いはあるのだが、その戦いの決着が不明。7人のうちの一人アドゴニー・ロロにいたっては登場もしなくなってしまう。
この中で、特撮出身というカラーが最も活かされていたのが「実写版 美少女戦士セーラームーン」に出演していた小松彩夏。戦闘シーンでは、ひとりだけコスチュームに突然変化し、セーラームーンの決め台詞「おしおきよ!」を連発。ちなみに怨霊(松村雄基)がはじめて7人の前に姿を現すときに、それまで怨霊の存在を信じていなかった彼らが、「実写版だ」というセリフはセーラームーンを意識したセリフと思われる。
出演が多いのは木下あゆ美(特捜戦隊デカレンジャー)と永田杏奈(仮面ライダーカブト)で好演しているが、映画前半に紹介される特殊能力が後半のファイトに活かされていないのは残念(活かされているのは7人の中で小松だけ)。
「仮面ライダー剣ブレイド」こと椿隆之は、唯一のファイトが怨霊の子供達というものであり、しかも、小松の助けを仰ぎ、この戦いの結末は映画の中ではわからないという中途半端なもの(映画のエンディングで、小松が子供を「おしおき」しているシーンが挿入されているが)。椿と中村を戦わせれば、仮面ライダー対ウルトラマンという夢の対決になっただけに惜しい。
仮面ライダー555の芳賀優里亜の出演場面は7人の中では3番目に多いが、秋山莉奈(仮面ライダー電王、仮面ライダーアギト)は、メイドカフェの店員として数秒だけ小松と共演。ウルトラマンマックスのミズキ隊員こと長谷部瞳は二役で登場しているが、出演場面は短いが重要な役どころ。
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