三隅炎雄

望郷の海の三隅炎雄のレビュー・感想・評価

望郷の海(1962年製作の映画)
3.4
ボクシングのトレーナー小林旭は、自分の預かり知らぬところで仕組まれた八百長試合のせいで、恋人松尾嘉代とボクサー藤竜也をやくざの深江章喜に惨殺される。悪党深江の生来の臆病さ、その深江を猫可愛がりする兄の金子信雄、八百長事件後精神を病んで街を徘徊する対戦相手郷鍈治、新しい人生を模索する深江の愛人楠侑子と、型通りのヒロイン松原智恵子を除けば、主たる登場人物の心の陰影は丁寧に描かれているし、古川演出も本腰でじっくり見せるのだが、最後の最後が甘く、スタア映画の限界があらわになる。終盤の寺から島に場所が移る展開がどうにも不自然で、トップ屋中台祥浩の行動も取って付けたよう、何らかの事情で終盤が変更になったのかもしれない。演出に処理の苦労の跡は見えるものの、それまでの展開だとやはりこれははっきりした悲劇で閉じられるべきだったろう。深江と楠が好演。ちょっと勿体ない映画。
三隅炎雄

三隅炎雄