ちろる

モラン神父のちろるのレビュー・感想・評価

モラン神父(1961年製作の映画)
3.6
イタリアとドイツに支配された街で、ユダヤ系共産主義者の未亡人バルニーは、
神について語らうために、毎週木曜日の夜にモラン神父との宗教問答を繰り返す。

無神論者であったバルニーが心に描いていたのは大衆に寄り添わない、気高いが頑固な神父像。しかし高邁で深い人間性を持ったモラン神父は柔軟性もあり無神論者であるバルニーに対しても無理強いすることはない。
しかも美しいルックスの持ち主であったためバルニーの心を揺り動かさずにはいられない。
木曜日が懺悔ではなくていつしかデートのようなそんな気になってしまっているのだ。

モラン神父は深い信仰心を持ち、聖書にある神の御心に忠実であるが故に、言葉で深い愛を与え、知的な絆が芽生えてきますが、しかしそれは神の子としての愛であり恋愛のそれではない。
幾度も重ねる会話の中で寂しい女心を刺激する彼の愛の言葉は、いつしかバルニーを勘違いさせてしまう。
戦争で夫を亡くし1人で娘を育てるバルニーに芽生えた恋心が報われないのは、同じ女として見ていて虚しい気持ちにさせられてしまう。
宗教的愛情と、世俗的恋愛は交わる事はなく、並行線をたどるこの愛の残酷な描写も、モラン神父の高潔な存在感故にとても品のあるラブストーリーに仕上がっているこちらの作品、今の時代にはない優美な雰囲気に満ち溢れています。
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