大道幸之丞

マイレージ、マイライフの大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

マイレージ、マイライフ(2009年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

これは面白かった。視点がいかにも現代的で良い。

企業に雇われ、代わりに解雇宣告を実行する仕事のライアン・ビンガム(ジョージ・クルーニー)は多忙で連日国内を出張で飛行機で飛び回っている。仕事というより旅そのものが好きで、マイレージを1000万マイル貯めるのが目標だ。

気楽な独身生活を選び、講演では一転してモチベーターの立場となり「バックパックをいかに軽くするか」を説くほど、自身が身軽であることを生き方のスタイルにしている。そこへ同じように出張に忙しい30代の女性アレックス(ヴェラ・ファーミガ)とバーで意気投合、程なく割り切った間柄になる。

ある日会社から呼び出されたライアンは、新入社員23才のナタリー・キーナー (アナ・ケンドリック)が出張経費の無駄を唱え、ビデオ会議式の解雇宣告を提案。ライフスタイルそのものを破壊される危惧から、ライアンと険悪な関係になる。しかし社長の提案でライアンの現場でナタリーを修行をさせてほしいと頼まれる。

——思っていたような現場でなくヘビイさを感じるナタリー。この出張中に彼氏にメールでふられ、パートナーの必要性をライアンに絡む格好で議論を挑む。ライアンはナタリーへはアレックスも紹介し、ちゃっかり忍び込んだ企業のパーティで3人はエンジョイする。ナタリーに感化されたのかライアンはアレックスを大切に考えるようになり、妹の挙式にも誘い身内同然の感情となる——が。

いつものように講演中に「人生を身軽に」を説く最中で何かに思い当たったライアンはその場を途中で抜け出し、アレックスの自宅を訪ねると、そこには家の中を走り回る子供と旦那の声が聞こえてくる。彼女の事情を察したライアンはその場を黙って立ち去る。

彼女は日常の息抜きのためにライアンと関係していた事を電話で告げ、求婚寸前気分であったであろうライアンへ突如の訪問の当惑を告げるのだった。傷心のライアン。こんなときに帰路の航路で1000万マイル達成の祝福を機内で受けるライアンは、帰宅後ハネムーン費用がない妹夫婦へマイルの譲渡を手配する。

——社会派のドラマかと思いきや「人生を豊かに生きる選択」を考えさせるヒューマンストーリーだった。押し付けがましくなく人と人のふれあいで感化されていくライアンの自然さと心理描写が秀逸と感じた。

見事にふられ傷心のライアンはジョージ・クルーニーだから観ていられる。アレックスも進むにつれ「これは彼女になにか裏事情があるのでは」と思わなくはないが、決定的な場面になるまでは相思相愛と思わせる演出は物語のキモだけにうまい。

傷心なライアンの気も知らずに「私は大人の女よ。また電話ちょうだい」と意に介してない姿に「女ってこういう所あるよな」と共感。

テンポもよく内容と脚本のよい作品だ。鑑賞後の後味もよい。