みんと

プリンス・オブ・シティのみんとのレビュー・感想・評価

プリンス・オブ・シティ(1981年製作の映画)
3.9
社会派シドニー・ルメット監督作品を鑑賞。

原作は実在した麻薬課潜入捜査官ロバート・レウチをモデルにした実録小説。
“街のプリンス”と呼ばれたNY市警麻薬捜査チームの腐敗の実態を淡々と描く今作。

「仲間を絶対に売らない」と言う強い結束のもと結ばれた彼らだったが、内情調査のため検事局から白羽の矢が立ったチェロ刑事は調査に協力するうち、とんでもない代償を払う事になる…

登場人物が多いうえ3時間弱と言う長尺に頭が混乱するも、主人公チェロ刑事役トリート・ウィリアムズの次第に追い詰められ苦悩する演技がそれは素晴らしかった。
終始緊張感の中で感じる実録風なリアリティがビシビシ感じられる。

密告による正義は、当然守りたかった仲間をも巻き込む事くらい想像出来ただろうに、自分の中の正義に抗えなかったチェロ刑事の勇気を称える一方腐敗に目を瞑れたならばどんなにか楽だったろう…つい思ってしまう。
裏を返せばそれくらい後悔と自己嫌悪にまみれたチェロ刑事と同化していた。
…もっとも自発的な密告ではなく、追い詰められての内通ではあるけれど。

意表を突く展開や、エンターテインメント性は期待出来ない。ただ地味にジワジワ描かれる人間ドラマが見応えに通じる。
今作もまた監督らしい骨太な社会派作品に違いない。
みんと

みんと