PerMetalPower

プリンス・オブ・シティのPerMetalPowerのレビュー・感想・評価

プリンス・オブ・シティ(1981年製作の映画)
3.8
ある方向への「決断」ではなく、「最初から彼(ら)は二律背反を抱えている」というのを滔々と撮っていることが最大の美徳だと思った。その視点においては、決断というものは行動不能という最悪の事態を避けるために(ある種なし崩し的に)されるものでしかない。“正しい”決断などというもので観客をアシミレートさせるみたいな発想ではそれを取り違えてしまう(そうして映画は行動不能に対し開き直ることで表層を塗りつぶしてしまうだろう)。ルメットもそこからは一歩引いている。それがたぶん引きの構図のよさに繋がってくる。トリート・ウィリアムズの孤立に関わる説話性に限らず。あとアップとの関わり合いのよさ(人物間でのブツのやりとりが、基本的に汚職・捜査の違法性という根幹にかかわってくることも大きいだろう)もある。
座ること、座って話すシーンがだいぶ多いはずなんだけどもそれが映画の疵になっている感じもない。最初にウィリアムズが公安局に呼ばれた古びた部屋で座る椅子が壊れて転倒するとか、汚職刑事たちとのパーティで取り乱すとき一瞬後ろへ倒れそうにチェアの前足が浮くとことかが印象に残った。
ホテルでカーマイン・カリディが泣いてるのが、泣いているという心理的それっぽさでなく、眼の下の濡れた痕がてかてかと光るライティングで引きの画でもありありと分かるあたりが好きで、こういう表象へのきめ細やかさは断固として支持したい。
PerMetalPower

PerMetalPower