継

プリンス・オブ・シティの継のレビュー・感想・評価

プリンス・オブ・シティ(1981年製作の映画)
5.0
NY市警, 特別麻薬捜査班のダニーは, 汚職調査委員会の検事から捜査協力を打診される。

麻薬中毒者=ヤク中からネタを吸い上げ, 違法な捜査で成果を挙げていた麻薬捜査班。
だが, 日頃から彼らの窮状を目の当たりにし, 依存からトラブルを起こす自身の弟も救えないジレンマを抱えていたダニーは,
ここから抜け出して自身を正そうと「班の仲間は決して売らない」約束を取りつけて協力に応じる。
隠しマイクを装着して潜入捜査を敢行し, 次々に証拠を掴んでいくダニー。
だが調査が拡大するに連れ捜査は仲間へも波及し, 疑惑の目は自身へも向けられてゆく。。。


'81年の作品。
くたびれてザラついた映像の質感, 外壁を煉瓦🧱で積み上げただけの無骨な建築, 黄色くくすんだ安っぽいダイナー, 停車する度にフロントがガクンと沈み,上下にボディを揺らすデカい図体のアメ車…『セルピコ』から8年を経たルメット作品ですが, 劇中の雰囲気や設定には'70年代のNYの面影が色濃く残っていました。

如何にもルメット的な, 実話に基づいて警察内部の腐敗を内部告発するストーリー。
潜入捜査のスリルを楽しみ, その成功に浮かれていたダニーは, やがて盗聴を疑う相手に殺されかけるも九死に一生を得ます。
盗聴器の電解液が漏れて腹を焼いてしまうシーンが, デパルマ『ミッドナイトクロス』を思い起こさせるけど, それもそのはず。
本作の映画化はデパルマも熱望したけれど叶わず, 代わりに隠しマイク・ネタを拝借して撮ったのが『ミッドナイトクロス』だそうで, 逆に考えるとデパルマはココからあのストーリーへよく繋げたなーって感心しちゃいます💮ヤッタネデパルマ!\(^o^)/🦉🎆🙉


ヤク中を飼い, ヤクを渡す見返りに情報屋へ仕立ててネタを得ていたダニーに似て,
検察は汚職捜査に協力する刑事を飼い, 無罪放免と身の安全を約束する見返りに彼等に盗聴器を装着し, 危険な現場で掴ませた証拠を絡めとって成果を挙げ, 出世の階段を上がるー。
ヤク中を飼い, 同時に検事に飼われたダニーを通して, 観る者はピラミッドのような歪んだ権力構造を目の当たりにします。

刑事が「法は現場を知らない」とシビアな窮状を訴える一方で,「法が機能を失えば秩序を失う」と譲らない検察。
その上で, 私腹を肥やしておきながら金をくすねる理由を再犯抑止の為と言う刑事の言い訳や,
法に縛られるあまり膠着し, 現場を省(かえり)みない法曹界の体質に疑問を呈する事も忘れない。
警察と検察ー。映画は, 両者の隔たりの大きさを映した後にその溝を埋める術を模索すべく, 険しいストーリーを歩んでいきます。


3時間の長尺, 台詞のある人物が126人も登場し, 盗聴を恐れて偽名で呼び会う面会や, 堂々と偽証される供述に, 観てて(あれっ?(^o^;)q)と混乱させられる事しばしば。
登場人物各々の所属や相関は複雑を極めて, 途中でワシントンの連邦捜査官(FBI)が介入してきて捜査範囲が更に広がると分かった時には 「あ”ぁ"~っ!」とヘンな声が出そうに😹(笑)。

ただ, その割りには各々の存在・動線には確固たる必然性としっかりした個性があって, ピンッ!と張り詰めたテンションは最後まで弛むことなく, ルメットも名を連ねる脚本の高い完成度を物語るよう。今作はルメットで正解でした💮ゴメンネデパルマァ(T∀T)/~~~

仲間を売る事が正義へ繋がるのに売る気などハナからなく, 裁判でも偽証すればいいとタカをくくっていた, “あまちゃん”なダニー。
それも, 連邦捜査官(FBI)が介入して捜査範囲が広がると, 事態は彼がコントロール出来る範疇を軽々と越え, ダニーは精神的に追い込まれていきます。

これと対照的なのが漢な刑事, ガス・レヴィ。
潜入捜査でマフィア検挙にあと一歩まで迫りながら検事に裏切られ, “起訴を免れたいなら…”とダニー達仲間を売るよう強要されながら頑として口を割らず “起訴するならケチな収賄じゃなく暴行罪にしろ!”と検事をブン殴る痛快さ(o^-^)尸!
ガスはダニー同様オイシイ思いはしていたものの, 自分なりの矜持(きょうじ)を貫いて最後まで仲間を売らないんですね。
ではこうした強さを持ち合わせない, よりナイーブなダニーを主人公としたのは何故か?そうして浮かび上がるのは何か? 仲間とは? 正義とは? …🤔

終盤に下される2つの裁定を “甘い” と感じるのは自分だけではないと思いますが,
ああして生かされた結果があの「ラスト」へ結実するわけで, 果たしてあの待遇を “お手柄の対価” と見るか, 或いは “反面教師の晒し者” と見るかはさておき, あの結末ありきで逆算して組んだプロットか?という気もします。

“Prince of the city”と呼ばれた男が, 自身を正そうと踏み出した一歩, その苦い代償。
これと引き換えにダニーは何を失い, 何を手にしたのか?
観る者へ幾つかの問い掛けを残した上で, パンパンに膨らませたストーリーを手際良く収斂するルメット。彼の作品では本作が一番好きです(o^-')b !
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