りょうすけ

ポーラXのりょうすけのレビュー・感想・評価

ポーラX(1999年製作の映画)
3.8
「ポーラX」

「白鯨」で知られるハーマン・メルヴィルの「ピエール」をレオス・カラックスが脚色した作品。レンタルや配信がなくセル版のDVDも廃盤になっているため現在鑑賞が困難な作品となっているがユーロスペースにて開催されている特集上映「WE MEET LEOS CARAX !」にてなんとか鑑賞することができた。

「アレックス三部作」がカラックスの代表だとすると「本当にカラックスが撮ったのか?」と疑いたくなるような映画である。ドニ・ラヴァンが出ていないのはその理由の一つと考えて差し支えないが、撮影の方法も違うように思えるしどことなくカラックス味を感じないようなというのが序盤までの感想である。

中盤まで話が進んでいくと明らかに自身の経験を投影した物語になっていることに気づき「やっぱりカラックスだ…」と誰もが思うだろう。人を愛し崩壊していく男の生き様、なんとも美しい。

カラックスはどの映画においても「男が崩壊していく様」を描いていると思う。「アレックス三部作」もそうだし「アネット」も本作も… 「ホーリー・モーターズ」を除けば全てが一貫した題材の元造られていることに気づける。

なぜそのような映画を作り続けるのか。カラックスという男の人生とは?監督作品を全て観ても謎の多い男である。

余談ではあるが今回の上映は35mmフィルム上映だったようだ。今後劇場公開がなされるかが微妙な作品なのでこの貴重な機会を逃さなかったことは非常に幸いだった。
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