うかりシネマ

スピード2のうかりシネマのネタバレレビュー・内容・結末

スピード2(1997年製作の映画)
-

このレビューはネタバレを含みます

前作ヒロインのアニーがジャックと破局し、新しい恋人であるアレックスが主人公となる。
舞台をバスから豪華客船に移すが「スピード」感は一切ない。時限式のスリルはなく、ブレーキの壊れた船のスピードを主人公が緩めるだけ。
そもそも、バスなら成功でも失敗でも複数パターンが考えられるが、クルーズ船なら何が障害でも「止まる」以外あり得ないわけで、結末が見え透いているので興奮のしようがない。
観客が見たいのはジャックなのに、前作主人公と別れた女に出てこられても困る。応援したくならないので続投した意味がないし、スピード要素もないので続編である意味もない。

SWAT所属の主人公がたまたま船に乗っていただけなのもあまりに偶然すぎて、主人公たる必然性に欠ける。前作のような犯人との接点もないので、知らん奴と知らん奴の結婚を知らん奴が邪魔してるだけで、ストーリーを牽引するドラマが弱すぎる。
犯人の境遇が悲惨すぎるのも娯楽映画としてあるまじき。

パニック描写は乗客の数が多いせいで衆愚そのものだし、主人公もそれを鎮めるほど冷静じゃない、ヒロインもうるさい、プロであるはずの乗組員も無能、警察も一切関わらないと、不快になる要素しかない。
前作の犠牲者のように本人が死ぬわけでなく、騒いだ夫婦が死なずに人を殺しているのも胸糞悪い。
前作は全てがクライマックスで無駄なシーンなく緊張感を保ち続けたが、本作ではスピード感がないことに加えて犯人が動くまでが遅いので中だるみしかなく、船が暴走してからも極限状態で面白くないギャグや下ネタをいちいち挟むので没入感を削がれる。

素人の警察官が一人で指示を出せるのも、適当なアイデアで閃くのもご都合主義で、説得力がないまま事態が解決する。
アクションのクライマックスと犯人確保が伴わないのも面白くないし、ヒロインの誘拐も意味不明。
おまけに主人公が犯人を(同情したとかでもなくただ無能に)見逃すのでカタルシスもない。

冒頭で解決する事件は前作のエレベーターのように“スピード”のモチーフで重ねているわけではなく、主人公のキャラも描写されない。かといってアクションに見所があるわけでなく、犯人もただの窃盗犯なので何を楽しんでいいのか分からない。
ヒロインの教習はギャグが冴えてないし起こるアクシデントもシンプルに笑えない。

前作のラストの台詞はアクション大作を皮肉った反語だろうに実行しているのでより空虚になっている。免停設定も「なのにバスを運転する」の反語なんだから、これを素直に読み取るのも馬鹿でしかない。
冒頭の違和感が払拭されるどころか、その印象が正しかったことを確認するだけの作業でしかない駄作。

前作は私の知る限りでは唯一(私が見落としてなければだが)戸田奈津子字幕で“なっち語尾”(「◯◯で?」「◯◯とか」など)が使われてなかったが、本作では「本当に火災が発生を?」という台詞があるので、なっち語尾ファンは安心されたい。