Keigo

原爆の子のKeigoのレビュー・感想・評価

原爆の子(1952年製作の映画)
4.2
こちらもフォロワー様から教えいただいた作品。『ある映画監督の生涯 溝口健二の記録』を最初に観たので新藤兼人監督作品は二作目ということになるが、一作目はドキュメンタリーなので実質初めて観るような感覚で観た。

素晴らしい作品だと思った。
昭和と平成の境目に生まれた自分でも原爆に関する作品に対してはそれなりの自意識を持たざるを得ず、客観的に観ることは出来ていないのかもしれないけれど。

こんな作品が作られたのはいつ頃だろうと調べてみると制作年は1952年。原爆投下から7年後にすでにこんな作品が...?原爆災害を正面から取り上げた世界で始めての映画であるらしい。この作品が撮られるまでには数々の苦労もあったようで、それでも完成に漕ぎ着けた監督や主演の乙羽信子にはただただ頭が下がる。

原爆投下の瞬間の惨状は直接的な描写は避けられているようで、それが何かしらの制約の上での事なのかあえての意図的な描写なのかは分からなかったが、十分にその悲惨さは伝わってきた。しかし主に描かれていたのはその6年後、原爆がとれほど深い影を落としていたか。そしてそんな日々の中で人々がどのように光を見出していたか。

乙羽信子の凛とした佇まいと眼差しがヒロシマの惨状を際立たせているようで素晴らしかった。橋の上での涙が、とても美しかった。

人類はこの恐怖を背後にすることでしか、均衡を保てないのだろうか。核兵器がこの世から無くなれば、より悲惨なことが起きてしまうのだろうか。

またしても偉大な日本人監督の名前を知ることが出来た。


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