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奇跡の丘のらのレビュー・感想・評価

奇跡の丘(1964年製作の映画)
3.6
冒頭のただならぬ気配を漂わせるシークエンス(ここが最も映画的な気がする)と、磔刑の画的な美しさが特に印象的。

共産主義者で無神論者のパゾリーニが「マタイによる福音書」を忠実に映画化していることに特別な意味を見出したくなる。もしかしたら「忠実に読んだら、イエス・キリストはこんなにも反権威・反体制的な革命家だったよ」と強調したかったのではないか。良くも悪くも余計な装飾が少ないのでそういった意味での面白みには欠けるし、あくまで超人的に描かれるイエスには人間味もなく、ただ即物的な(?)形式がひたすら連なった映画で、それによって却って聖性を帯びているのが不思議な質感だった。選曲も不思議。
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