HidekiIshimoto

奇跡の丘のHidekiIshimotoのレビュー・感想・評価

奇跡の丘(1964年製作の映画)
4.0
パゾリーニのマタイ福音書再現映画。聖母マリアの美風貌から始まり、当然のようにマタイ受難曲が流れ、何故かブラインド・ウィリーのブルースも流れ、駿台予備校に3年ほど通ってる人みたいな風貌のキリスト様登場。再現だからしょうがないけど、聖書の台詞をしつこく執拗に喋りまくるキリスト様は益々鬱屈した浪人生みたいだ。それでもタイムスリップして現場目撃中の気分になるのは生々しい中世空気感のせい。『アポロンの地獄』もだったけど街も原野も異様の神話的光景。あの街は現存する街なのかそれとも遺跡か何かなのか?あの原野は一体地球なのか?開けっぴろげなフェリーニと違って何か得体の知れないパゾリーニは地球に落ちてきた男なのか?「ムッソリーニの命を救ったことで有名なファシスト」の軍人を父に持ち「未成年青年への淫行容疑をかけられ共産党除名、教職も追われた」後に作家と監督で名をなし、最後はネオファシストから「激しく暴行を受けた上に車で轢殺された」というパッションなパゾリーニ。得体は知れてるけど難儀な人だ。