てっちゃん

奇跡の丘のてっちゃんのレビュー・感想・評価

奇跡の丘(1964年製作の映画)
3.8
変態映画詩人こと、パゾリーニさん作品。
マリア処女懐胎からイエス生誕果ては復活までを描く物語。

ざっくりとした話の流れは、キリスト教に触れていない私ですら知っているくらいに有名な話。
その有名な話を超劇的に描くのでもなく、雄大に描くのでもなく、淡々と粛々と描き切っている。

本当に淡々と描いているので、物語の大掛かりな仕掛けもなければ、言ってしまえば起伏もあまり感じられないので、寝落ちコースかもしれんぞと危惧していたけど、実際はその心配はなくて、パゾリーニさんの世界観が溢れているので、きちんと起きて鑑賞することができました。

キリストと言うと、絵画のイメージからか白人であるというイメージがあったが、本作のキリストはアラブ系。
そもそもキリストの生まれたとされる場所からして、そのへんの人種が妥当だそうで、そのへんも勉強なるわーと思いながら鑑賞することができました。

本作はキリストが言った、ありがたき言葉の連射があり、それはそれはありがたき気持ちになると同時に、結局なんでもありじゃねえか感も出てくる。

パゾリーニさん印の執拗にお顔アップが何回も出てきて、これは感情を読み取る時間ともとれるのでしょうが、執拗に撮るそのお顔アップの意味とは、、私はパゾリーニさんが人間そのものを撮るの人なのだ!という思いに溢れていたとも思ったり(本作は特にそれが顕著であり、それは素人役者さんばかりだからってのもあるのだろうか。果たして自分が何を言っているか分かってません。)。

キリストのお顔アップのときの、にやり顔で吹き出してしまい、確かなギャグ要素も入れてくるし、キリスト復活のときのマリアの表情よ。

この表情が、これまでのお顔アップが重ねてきた結果であるのかと思うことともに昇天へと向かうことでしょう。
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