Punisher田中

奇跡の丘のPunisher田中のレビュー・感想・評価

奇跡の丘(1964年製作の映画)
4.8
ヨセフの婚約者マリアは処女のまま子を身籠った。
驚いたヨセフの前に突如として天使が現れ、マリアは聖霊によって懐妊したことを告げては、そのまま結婚し、その子をイエスと名付けなさい。と告げて後を去るのだった。
そして遂にイエス・キリストが生まれるーーーー。
これは、キリストが起こす奇跡の数々を描いた作品。

「マタイによる福音書」の映像化した作品だったが、リアリズムに傾向して描かれ続けるインパクトのある画がいつまでも続く今作はもはや、作品そのものが奇跡であることを痛感させられる作品だった。
俳優が素人...ということだったが、逆にその自然さがかなり良くて、その全く演技じゃ無い演技がイエス・キリストの演技として成り立っていて、より徹底されたリアリズム描写と画にバチっとハマっている。
今の時代じゃ撮ることが不可能なロストテクノロジー尽くしの作品なので、ハマる・ハマらない以前に""鑑賞""するだけでもかなりの体験価値があると思う。(それはどの作品も同じだけども!)

所作を一切切り取り、ほぼ全てを顔面ドアップ・バストアップで決め切る画の数々は、今作の原典「マタイによる福音書」以上の何か(監督が福音書で感じた何か)を描こうとしているのが見えたのだが、未熟なので受け止められなかったのが悔しい。
しかし、原典に歯向かう(?)ような形でキャラクターを所々イジっているのが良かった、特にマリア様に関してはかなり寡黙なキャラクターに...
無神論者のパゾリーニだからこそ出来る試みであり、宗教そのものを俯瞰で感じ取って何かを生み出せる人の存在って意外と貴重なのかもしれない。
パゾリーニ作品って割と入門に度胸が要るかもしれないけど、他のパゾリーニ作品と違って、割と画で語る部分が少ないのと、そもそも原典があるというのだけでもかなり分かりやすい物になっているので、是非今作をパゾリーニ入門作にしてみては...!
何より画の美しさが全編決まっているので構図マニアには堪らない作品では!!