カラン

奇跡の丘のカランのレビュー・感想・評価

奇跡の丘(1964年製作の映画)
4.0
フェリーニの『甘い生活』(1960)と、シルヴァーノ・アゴスティ『天の高みへ』(1976)のあいだに置いてみると、この『奇跡の丘』(1964)はかのパゾリーニの手になるものだが、品行方正にすら思えてしまう。このイタリア人たちは、3人とも非常に強烈で猥雑な映画を撮っているのは周知の通り。そういう中ではわりとお行儀の良い本作だが、非常に好戦的なイエス・キリストの描き方だと思う。

ゴルゴダの丘でイエスが磔になり、もうすぐ死ぬことになるが、自分を死に追いやり、はやしたてる人間たちを見て、「あの者たちをお赦しください、自分のしていることをわかっていないのです。」と天に祈ったとルカは伝えている。この映画はマタイをベースにしているらしく、ルカにあるイエスの祈りの言葉は引用されない。そもそも、全編にわたって愛と赦しの教えは影を潜め、まるで『ラッカは静かに虐殺されている』の広場でライフルを持ちながら、言葉巧みに住民に教えを説く原理主義者のようである。攻撃的で、人を脅かすような論理で民衆を扇動するイエス像。

冒頭の円形の構造体を背景にした母マリアのショットと、ゴルゴタの丘を登ったところにマグダラのマリアか母マリアが到着した頃の、光を反射させて輝く金色の草むら、の二つが印象的だった。





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カラン

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