がちゃん

サチコの幸のがちゃんのレビュー・感想・評価

サチコの幸(1976年製作の映画)
3.2
原作は、上村一夫の劇画。
同じ原作者でスマッシュヒットした『同棲時代・今日子と次郎』の夢をもう一度という思いで制作されたのでしょうか。

で、出来栄えはというと、もう少し頑張りましょうという感じです。
漫画的演出が、いまいち効果が上がっていない。

昭和26年。
浅香光代が女将をしている2丁目(現在の新宿2丁目)の売春宿で働くサチ子(三浦リカ)という少女がいた。

誰にでも愛想のいいサチコは、近所の若者から人気で、彼女自身も、「今にきっといいことがある」と前向きな心を持っていた。

サチコ。
彼女はケンと初恋に落ちた。
ケンは、自分の右肩に幸子の文字を彫り愛し合うのだが、彼女の前から去ってしまう。

同じ店で働く嬢たちの悲喜劇を織り込みながら、幸子は常連客ながら店では何もしない青年、広沢(寺尾聡)に求婚されるのだが・・・

主演のサチコを演じる三浦リカが、完全に脇に喰われてしまった感。

出番は少ないが、♪お池にはまってさあ大変。私に嵌るともっと大変~と歌いながら客を取る、悠木千帆(樹木希林の旧名)が楽しく、コメディリリーフとして画面をかっさらう。

進駐軍の米兵に捨てられる、永島映子もさすがの存在感を示し、田中角栄がモデルであろう、政治家を目指すオヤジの鈴木ヒロミツも、なかなか角栄さん似ていて楽しい。

それらと比べると、主演の三浦リカに残念ながら魅力が足りない。
初恋の相手のケンの扱いも雑だったなあ。
サチコにとってはその後の性格に大きく影響する大事な人物なのに、あまりにも描写が浅いので彼の身に起きる悲劇に全く心が動かない。

演技力不足の三浦リカの長回しを少し切って、こちらを充実させた方がよかった。

売春宿の押し入れに住み着く変態漫画家の桃谷という人物や、幸子に憧れる童貞の少年次郎ももう少し丁寧に描いてほしかったな。
どれも、中途半端なんですよね。

でも、自分を縛り続けていた象徴の赤い靴を脱ぎ棄てて、少年野球に参加して裸足で空き地を駆け抜ける姿は、少し照れくさくなりますけどいいシーンになったと思います。

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