あなぐらむ

大日本スリ集団のあなぐらむのレビュー・感想・評価

大日本スリ集団(1969年製作の映画)
4.3
福田純的には「野獣都市」の前年の作。ネタは大阪を舞台にした、大戦の戦友だったスリ・三木のり平と刑事・小林桂樹の奇妙な友情と、大きくなった子供の前で戸惑う様を描く人情喜劇。親子の相容れなさは「野獣都市」にも共通し、福田のテーマだったのかもしれない。

頑固一徹デカの小林桂樹もハマリ役だが、口八丁手八丁な三木のり平がまた良い味。酒井和歌子の清廉さ、福田組ではかなり常連の高橋紀子さん(彼女目当てで観に行った)がなんとのり平の嫁にしてお座敷ストリッパー!眼福。本作が寺田農とのご縁?洒落者スリの平田昭彦の役名フランスは笑った。

藤本義一の作劇は、軽犯罪だがスリというプロ(組合と称し給料制で保険まである設定が面白い)と刑事達の戦い(現行犯でしか逮捕できない)が見ごたえあり、祇園祭にロケした攻防戦や大阪の雑踏と音の使い方等、素材を巧く料理する職人監督・福田純の技を堪能できる。正直東宝の扱いは酷いと思わんでもない。

キャストとしては結構なスター映画。田中邦衛が若き刑事役で良い。ポスターの見た目よりも重喜劇寄りな仕上がり。吉行和子さん綺麗やった(平田昭彦の妻役)。
※若い人のブラジル移住はこの時代には割と現実的な選択肢だったので、そういった時代風俗で揚げ足をとらずに、まず調べて欲しい。