映画スニーカー図鑑

初体験/リッジモント・ハイの映画スニーカー図鑑のレビュー・感想・評価

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Vans Classic Slip On Black/White Check (アホ高校生:ジェフ・スコピリが着用)

アスリートやラッパーのシグネチャー・モデルではなく、映画のために制作されたスニーカーとして『バック・トゥ・ザ・フューチャーPart2』のエアマグに並んで有名なのが、本作に登場したVansのチェッカーボード柄のスリッポンだ。青春映画の決定版として知られる本作は、異性やセックスのことばかり考えているスカスカな高校生たちの群像劇。正直、鑑賞後に内容を明確に記憶しておくのは非常に難しいが、ひとりひとりのキャラクターが立っているのが魅力的で、中でも最も観客の記憶に残るのが、若き日のショーン・ペン演じる底なしのアホ高校生:ジェフ・スコピリだ。その後のキャリアを知る者からすると、にわかに信じられないぐらい頭が悪そうなショーン・ペンを本作で見ることが出来る。『ツリー・オブ・ライフ(2011)』の主人公と同一人物が演じているなんて、とてもじゃないが信じられない。
 スコピリのトレードマーク的アイテムが、チェッカーボード柄のスリッポンだ。本作の制作チームが「南カルフォルニアの高校が舞台の青春映画用にシューズを」とオーダーしたところ、Vansが贈ったのがこの靴だったらしい。今となっては同社の看板商品のひとつだ。
 終盤、スコピリが大麻を吸いまくりながら、箱から取り出した新品の靴で自分の頭を叩き「頭蓋骨の音!ヤバくね⁉︎ 頭スッカラカンにハイだぜ!」と電話相手に誇示するシーンは、あまりのアホさに絶句する。“ホンモノ”のアホは発想の独創性も機知も皆無なので、クレイジーな魅力でさえ感じられない。究極に凡庸というか、虚無なのだ。見事に再現してみせたショーン・ペンはこの頃から名優だったに違いない。
 また、フランク・オーシャンは2016年、オバマ主催のホワイト・ハウスでのディナー・パーティーに、この靴を履いて参加した。最近だとアリ・ウォンも、Netflixのコメディ・スペシャルの第三弾でこの靴を着用している。


衣装デザイン:Marilyn Vance
登場・コラボ:どちらも