囚人13号

恐怖の土曜日の囚人13号のレビュー・感想・評価

恐怖の土曜日(1955年製作の映画)
4.7
超ド級の傑作。強盗計画の綿密な下見は欠かせないが、部外者である彼らの視点を通じて町民どもの痴情/浮気/覗き魔/コソ泥など俯瞰すると、果たして彼らに強盗を非難する権利があるのかという疑問を残したままついに計画が実行される。

この廃れた町で唯一の正義とも言えるヴィクター・マチュアと痴情とは対極に位置するアーミッシュ一族の存在が町民たちと上手く対比され、特に非暴力の象徴的存在であるアーミッシュの長が静かに怒りを爆発させるシーンはこれまでのスリリングな三対一の図式を逆転させると同時に、やはり人間は綺麗事だけで生きてはいけないのだと悟る哲学も孕む。

テクニカラーやシネマスコープもフライシャーにかかればさして問題ではなかったようで、誰であろうと迷いなく撃ち、ドラマ場面はミニマルな群像劇を建物から出入りする人物に次々と視点を合わせる経済性によって(本当の意味での)コンティニュイティを断つことなく、悪しき町民たちが銀行という特定の場に集った瞬間にドラマは更なる盛り上がりを見せる。

主要人物が同フレームに収まる度に視点が移っていくようなカメラワークが堪んねぇ。
囚人13号

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