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ゴッドファーザーのrensaurusのレビュー・感想・評価

ゴッドファーザー(1972年製作の映画)
4.7
マフィアをマフィアたらしめるのはファミリーを第一にし、恩義による友人関係を築いては守り、殺しはビジネスに限るということ。

裏社会は操っているようで操られている。マイケルには表立って権力を築いてほしかったゴッドファーザーの思いとは裏腹に、私欲に走ってしまう兄ソニーやビジネスライク過ぎる義理の兄トムよりもマイケルがゴッドファーザーとしての素質を開花させていく。

マイケルが私欲を解放しながらもビジネスとして殺しを働く様は追うごとに凄みを増していく。レストランで麻薬王ソロッツォとマクラスキー警部を撃ち抜くシーンは、ギラついた眼差し、ついに裏社会に足を踏み入れてしまったマイケル、アルパチーノの演技にクラクラせずにはいられない。最後の教会での洗礼と同時多発殺戮のシーンはゴッドファーザーとして確固たるものを築いていくマイケルが見られる。コニーの子の名付け親としてのゴッドファーザー、地位やファミリーを守り、ビジネスで殺しをするゴッドファーザー。ドン・コルレオーネの後継が完遂される。

シーンのあらゆる言葉、行動、仕草が登場人物達の背景、心理や、構造、展開を想像させ、照明、演技、演出がキラッと光る。いい映画とはこういうものなのかと感心させられる。イタリアンアメリカンという異国情緒やスーツなどの装飾、speak softly loveの哀愁など、客観的に魅力的なビジュアルもある。それに加え、視聴側が歳を重ねるごとに見え方や深みが増していきそうな重厚感が感じられ、登場人物の行動動機も複雑な上に意外とあっさりしているので、何度でも観たい作品だ。強いて言うならもう少し短く出来ただろうと言ったところと、年月が経っているので若干チープに感じられる演出があるところだが、それぐらいしか言うことがない。名作と呼ぶに相応しい作品だ。
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