頭の上の赤い林檎

ロッキーの頭の上の赤い林檎のレビュー・感想・評価

ロッキー(1976年製作の映画)
4.4
言わずと知れた名作をついに見た。
 
 幼い頃からバラエティでのオマージュなどで慣れ親しんだロッキーだが、ストーリーは全く知らなかった。はじめの一歩や明日のジョー的なサクセスストーリーかと思っていたのだが、蓋を開けてみれば違くて意外。だが、非常に面白かった。

 まず、終盤までロッキーが試合はおろか練習らしない。まじか。ランニングすらしない。否、練習場を追い出されている。
 ロッキーという男に徹底的にフォーカスしている。どんな男で、どんな背景があり、今彼を取り巻く現状と戦う理由。なのでサクセスストーリーというよりもヒューマンドラマなのだ。しかも3分の2を割いて丁寧に掘り下げていくのでしっかりと感情移入できる。

 そんなロッキーの不器用な人間性を表すシーンの中で特にお気に入りのシーンはジムの代表ミッキーがロッキーの自宅に来るシーン。
 今まで衝突を繰り返し、借金の取り立てに成り下がったロッキーに期待をしていた分ミッキーは彼を無碍に扱う。
 しかし、王者アポロとの試合が決まるとシムに戻ってこいとロッキーの自宅に現れるミッキー。もちろんロッキーは素直に応じない。10年前にそうして欲しかったぜ!と激昂しミッキーを追い出す。
 ああ、まあしょうがないよなあ。と思う私。ロッキーのミッキーに対する信頼はあまりないのか。と。
 しかしその直後、遠目のアングルからミッキーの寂しげなBGMと共に寂しく帰路に着くカット。家から飛び出してミッキーに追いつくロッキー。セリフは無しに一言二言交わし、握手する2人。
 ここ!めっちゃ好き。
 ロッキーの不器用で、でも心底では義理や温床を持ち合わせた性格を巧妙に描いている。
 きっと2人はこうして何度も衝突して仲直りしてを繰り返してきたんだろうなあ…というところまで想起させる遠くからのアングルのセリフを挟まない演出本当にセンスでしかない。

 そして遂にやってくる練習と試合シーン。今までの掘り下げがあるからこその、フィラデルフィアを全力で駆けるロッキーの姿はこれ以上ない輝き。
 試合シーンのエキストラをふんだんに使った会場の臨場感、2人のパンチの迫力。これが作り物とは思えない。

 そしてまさかまさかの結末である。
 ロッキーって1作目負けるのか!?
 あのエイドリアンの名前を叫ぶ名シーンって勝利の雄叫びかとずっと思っていた…
 判定までもつれた死闘で最後に敗れ、何もかも燃え尽きたロッキー。彼に残されたのは大切な愛だけ。エイドリアンだけ。2作目はアポロへのリベンジでも燃え尽きたロッキーの再起でも始められるし早く見たい。素晴らしいラストだ。

 あとはエイドリアンがあんなにもいけてない女子なのも、ロッキーがあんなにも女性の扱いが下手なのも意外すぎて面白かった笑