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ロッキーのmickeyのレビュー・感想・評価

ロッキー(1976年製作の映画)
5.0
不朽の名作。
映画を観たことがない人でも、ロッキーがフィラデルフィア美術館を駆け上がるシーンや「エイドリアーン!」と叫ぶシーンは知っている、それくらい有名な作品です。

自分も初見は小学生だったと思いますが、ロッキーのトレーニングシーンで真似をし、ビル・コンティのテーマ曲を口ずさみ、部屋の蛍光灯にぶら下がっているスイッチを相手にボクシングの真似をした記憶があります。
そんな子供から大人まで馴染みのある『ロッキー』ですが、自分が大人になって見返してみると子供の時に見ていた景色と随分違う。
まず、ボクシングを題材にしているけど一般的なボクシング映画ではないし「努力を続けていれば良いことがあるね」という教訓めいた話とも違う。
何故なら、落ちぶれてゴロツキ同然だったロッキーが世界チャンピオンのアポロと試合をするのは、たまたまラッキーが巡ってきたからです。
この作品は
スタローン自身がオーディションに落ち続け、仕事もなく困窮していた極貧生活で掴んだ唯一の希望であり、劇中のロッキーの境遇と重なります。

試合前日、ロッキーは「絶対に勝てない」と弱音を吐きます。
「でももし、最後までリングに立っていられたら、自分がただのゴロツキでないと証明できる」
子供の頃の印象では、ロッキーはもっと勝利に飢えた強気なキャラだと思っていたのでこんな台詞を言うことに驚きましたが、大人になって観ると、その切実さが痛いほど伝わってきます。
そして、エイドリアンとの細やかな愛の形も。飾り気はないけれど、純粋で美しいラヴストーリーだと思います。映画を通して観ると、あの「エイドリアーン!」のラストシーンは本当に涙が溢れます。

この現状から抜け出したい、幸せを掴みたいという純粋な思いは誰もが共感できるものです。何かに失敗した時、前に一歩踏み出すことが怖い時、孤独な時、力になってくれる映画だと思います。
『ロッキー』は、純粋に愛と成功を渇望し人生に勝利した男の話です。


P.S.イタリアに来てから、何度かイタリア語版で鑑賞しました。
エイドリアンはアドリアーナなので、最後にロッキーは「アドリアーナー!」と叫びます。
また、ロッキーのニックネームは「イタリアの種馬(Italian Stallion)」ですが、種馬はイタリア語で(Stallone)つまりスタローンのことです。
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