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ルパン三世 カリオストロの城のIkTongRyoのレビュー・感想・評価

3.8
4K+7.1chでリバイバル上映ということなので、映画館で鑑賞。そもそも『カリオストロの城』を観るのが初めて。この頃のセル画のアニメ映画ってやっぱいいなあ!

冒頭のカジノシーンから宮崎駿的なコミカルな動きをするルパンと次元。

ヨーロッパの綺麗な映像と共に映し出されるオープニングは、ハイジ的な要素を取り入れたいままでとは違う「ルパン」を観客に観せる。音楽も落ち着いたものが使われており、宮崎駿ワールドへと吸い込まれていく感覚がなんとも心地いい。

細かい描写がとても多く、例えばルパンがクラリスの部屋へ向かう際に屋根を登るシーン。
普通の演出家だったら、苦労しつつルパンを登らせ、そのまま屋上からロケットを使ってクラリスの部屋へと向かわせる。

だが宮崎駿は違う。

ルパンを一度屋根から滑り下ろし、ロケットもオイル切れのライターを登場させることで失敗させる。

わざわざそういった細かい描写を取り入れることで、「完璧じゃないルパン」を描写しているのはさすがだなと思った。

クラリスの細かい顔の仕草ひとつをとっても、宮崎駿感が滲み出ており、改めて演出のレベルの高さを痛感する。

そして世界観がとても大きいのも魅力的。
不正を許さない銭形が国家間による既得権益に阻まれる様子も、勧善懲悪だけではままならない大人の世界を醸し出している。綺麗事だけでは片付けられない大きな問題。

そんな大きな問題も、銭形✖︎ルパン、銭形✖︎不二子という異色のタッグで乗り越えていくのも素敵。

エピローグの「ヤツはとんでもないものを盗んでいきました。あなたの心です。」

とっても有名なシーンだけどちゃんと観たのは初めて。

このシーンまでの道のりをしっかりと観ていたら、銭形がなぜこんなことを言ったのかストンと腹落ちする。

ルパンはやっぱりジェームズ・ボンドの泥棒版なんだなあと痛感するような作品。

ルパンを知らなくても楽しめる、不屈の名作ですね。
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