大道幸之丞

セックスと嘘とビデオテープの大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

「ひでー邦題だなー!」と思いきや原題も「Sex, Lies, and Videotape」だった。スティーヴン・ソダーバーグの出世作。公開当時非常に話題になったが、やっと観ることが出来た。完全に大人のための映画だ。

非常に低予算であるが、予算が必要ない映画とも言える。

昇進したばかりで将来も嘱望されている弁護士ジョン(ピーター・ギャラガー)と専業主婦のアン(アンディ・マクダウェル)は生活水準は高いが元々セックスレスでアンはカウンセラーに罹っている。

セックスレスであるからなのか、それが無関係かは定かではないが、ジョンはアンの妹シンシア(ローラ・サン・ジャコモ)と不倫関係にある。

ある日そこへジョンの学生時代の友人グレアムが「住まいを探す間泊めてくれ」と訪ねてくる。

——しかしどうもジョンとそのグレアムは親しさがなくどこか妙だ。

彼はやり手弁護士で押しの強いジョンと正反対で、繊細で芸術家のような風情で、言葉のセンスと波長が合うアンはグレアムに興味を抱く、しかしグレアムは性的には“不能者”であった。

新居が決まりアンが訪ねていくとさして家具もない室内に大画面のTVと大量のビデオテープ(8mmVideo!) がある。内容はすべて不特定の女性から「セックス」をテーマに自由に語ってもらったインタビューだという。それに戸惑うアン。

まもなくそこへアンからグレアムの話を聞き興味をもった奔放なシンシアが訪ね、自然な流れでインタビュー収録を行ってしまう。

面白いのはアンはこの「セックスインタビュー」をなぜが過剰と思えるほどの感情で受け止めてやや取り乱す

シンシアから収録の事実を告げられるや過剰に反応するアン、この辺りから物語は大きく動き、アンはグレアムが「ジョンは嘘つきな男だ」と告げられた事から、何かの合点がいったように感情が動き、自宅からシンシアのイヤリングを発見しジョンの不倫も知る。

するとアンは自らグレアムを訪ね自らインタビューの収録を求める。

そこでインタビューの経過でシンシアがジョンと不倫関係にあることは知っていたと告げられショックを受ける。——と同時にジョンとの離婚を決意する。

離婚を告げられ、アンがグレアムの部屋に行った事を聞いたジョンは逆上しグレアムを訪ね殴り、アンのインタビューを視聴する。

するとまるで自分でさえ掴みあぐねていたアンの心が容易くグレアムに奪われたように感じたのか、意趣返しのように学生時代、グレアムの彼女エリザベスと寝た事を告げ、勝ったつもりになる。

——しかし多分グレアムが今回ジョンを訪ねたのはそこに関係があったように思われる。

ジョンは急にシンシアからも捨てられる。

その後はシンシアの不倫で、予定を蔑ろにされていた顧客に見放され、上司からが厳しい評価を受けるなど信頼を失墜していくジョン。

一方、なにかから開放されたかのように仕事をみつけ新たな生活を歩み始め、グレアムと楽しげに触れ合うアンの姿も追う。

——なにか暴力沙汰も大立ち回りがあるわけでもないが、結局「セックスインタビュー」は自己を見つめる役割を果たすのと同時に自己修復のような効果があるのか、姉妹は自身の生き方を見つめ直すきっかけを掴めた印象がある。ラストの場面も監督の優しい眼差しを感じる。

全ての大人の女性に是非勧めたい作品だ。