私がこれまで観た戦争映画の撮影手法は、ほぼ全ての作品が、何かしら(あるいは全面的に)この作品の影響を受けていたのだと分かった。
シュタイナーとシュトランスキーは対照的だから、登場した瞬間に2人の違いや、誰に感情移入すべきか分かりやすいが、これ自体はキャラクター設定としてよくある話だと思う。
ワイルドバンチもそうだけど、私がペキンパーに惹かれるのは、深い洞察がもたらす繊細な人物描写と、登場人物の関係性。本作も約2時間の尺のうち、はじめの30分間はストーリーや戦況の進展とは関係のない、壕内を中心にしたシークエンス。そこでこれらが丁寧に、時間をかけて描かれており、良さが存分に発揮されていた。
だから開始30分後にはジェームズ・コバーンのことを好きになるだけでなく、もし自分なら(絶対行きたくないけど、どこかに配属されるとしたら)彼のチームで、シュタイナーの直下がいい!とまで思える。この前提がしっかり出来上がっているから、どんな展開になっても、観客もぶれることなく、ついていける。
林の中を前進するシーンで、最後尾の若い兵士が日向を踏まないように変な格好で歩くところと、その理由を聞いたときのコバーンの表情も印象的(そして、ものすごく理解できる)。
スローモーションでは、序盤の接近戦で、使い終わった弾倉を放り投げるところ。あまりのかっこ良さに何度も止めて見たが、コバーンの表情や体勢、構図や編集、全て完璧で、本当にその"瞬間"が切り取られたように見えた。
終わってみると、一人一人にフォーカスした時にはあんなに深いドラマや、壮絶な生き方、死に方も、俯瞰した時には全てが一括りに"戦争"や"戦死"の一言で纏められてしまうのが、虚しくて恐ろしい。
※本作をすすめてくれてありがとうございました。お陰様でやっと観ることができました