福福吉吉

戦争のはらわたの福福吉吉のレビュー・感想・評価

戦争のはらわた(1977年製作の映画)
3.5
◆あらすじ◆
第二次世界大戦中の1943年、ドイツの東部戦線にシュトランスキー大尉が着任する。貴族出身で名誉欲の強いシュトランスキーはドイツ軍の現状を把握しておらず、兵士たちの信任の厚いシュタイナー軍曹と衝突する。鉄十字勲章を得るため、シュトランスキーはシュタイナーを懐柔しようとするのだが...。

◆感想◆
第二次世界大戦で敗色濃厚となったドイツ軍の視点で描かれた作品であり、ナチス色が薄く、兵士それぞれが生きのびるために戦っている姿は新鮮に映りました。また、それを理解していないシュトランスキーの空気の読めなさと古い慣習への囚われぶりも興味を惹く内容になっています。

本作の中心人物であるシュタイナー(ジェームズ・コバーン)は兵士たちの心情をよく理解しているため、兵士たちとの距離感が近く、上官というより良い兄貴分のような雰囲気がありました。地上での攻撃が続く中、地下壕で兵士の誕生パーティをするシーンはアメリカっぽくて、ドイツ軍のイメージに合わなくて不思議な感じでした。

一方、シュトランスキー(マクシミリアン・シェル)は駄目な上官であり、とにかく自分は偉いんだという承認欲求が強く、それでいて内弁慶で前線に立とうとしない臆病者として描かれています。彼の存在がシュナイダーの障害としてストーリーに面白みを与えていたと思います。

ストーリーはソ連軍に押されて、ドイツ軍は敗走を続ける状態になり、後半ではシュタイナーの部隊が前線にとり残されます。絶望的な状況の中でのシュタイナーの指揮能力の高さがよく出ていたと思います。

映像として戦場となるドイツ東部戦線にひたすら爆弾が降り注ぎ、銃撃が鳴りやまない状況がとてもリアルに感じられました。また、爆撃で天井が砂が落ちてくる中、地下壕で平然と話し合うドイツ兵たちの姿がとても印象的でした。

本作は戦争映画としての面白みと、前線で戦う者の必死さや悲壮感をうまく描いた作品であり、なかなか面白かったと思います。ドイツ軍視点であることで、ナチスという仮面を取り払ったドイツ兵士たちの心理がよく出ていたと思います。

鑑賞日:2023年9月9日
鑑賞方法:CS WOWOWプラス
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