みかんぼうや

戦争のはらわたのみかんぼうやのレビュー・感想・評価

戦争のはらわた(1977年製作の映画)
4.0
まだCGがほとんど存在しなかったであろうこの時代にして、戦争映画史上ナンバーワンではないか?と思うほどの銃撃量と爆風による、圧倒的にド迫力な戦場シーン。爆風で次々と吹っ飛ぶ兵士たち。「プライベート・ライアン」や「ハクソー・リッジ」が描く一瞬先は“死”という緊張感とはまた異なる、豪快でド派手な戦闘シーンは破壊的というか破滅的。さすが、あの「ワイルド・バンチ」の破滅的銃撃戦を作り上げたサム・ペギンバー監督。

そして、第二次大戦関連の作品で、戦場における敗戦色濃厚なドイツ軍側の兵士たちを描いた作品は意外と新鮮。なんと言っても、シュタイナー曹長を演じた主演のジェームズ・コバーンが圧倒的に“漢”としてカッコいい。

戦場の最前線を知らない口だけのダメ上官の下で、もがき犠牲となる最前線の誇り高き兵士たち。「事件は会議室ではなく、現場で起きている」はいつの時代も同じ。

そんな状況下で、畳み掛けるような迫力満点の戦闘シーンの先に待つ悲壮と皮肉に満ちたラスト。己の正義を貫くものが救われるわけではない悲しき現実のなか、戦場にこだまする、口だけ人間を嘲笑うコバーンの声は、現代社会において所属組織のヒエラルキーの中でもがき苦しむ観客の心の中にあるモヤモヤを代弁しているかのようで、最後までなんとも印象的な作品でした。
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