たむ

鰐 ワニのたむのレビュー・感想・評価

鰐 ワニ(1996年製作の映画)
4.0
追悼キム・ギドク監督、監督作品全作品レビューを続けてきましたが、最後はデビュー作を取り上げていきたいと思います。

全てはここから始まった、衝撃的な作品で、作家の全てはデビュー作に詰まっています。
パリから帰国して映画の脚本コンクールでの入賞からキャリアをスタートさせ、力業で本作を完成させたと聞きます。

格差への怒りを暴力と怒りで表現しますが、歪な恋愛も描かれる中で、衝撃なイメージの結末を迎えます。
まだまだあらけずり、低予算で全て脚本通りではないという話ですが、本作の経験はその後の低予算、早撮りで仕上げていく手法を確立します。

ここから作品レビューというより作家論です。
テーマを誰も想像できないようなイメージと幻想で描き切る唯一無二の映画監督、キム・ギドク。
思い出しレビューも含んでの全作品レビューで考察してきましたが、映画にどれほどの想いを込めて、観客の想像を超えられるか。
原動力は、自身が体験してきた格差や社会への怒りだったと思います。
その極端な表現は賛否両論を巻き起こし、多くの傷を負わせ、本人も負ったことでしょう。
それでも撮り続ける、私はそんな映画作家の全ての作品をほぼリアルタイムで観られた事で衝撃と映画の可能性、そして本来での意味でのカタルシスや癒しを得ていました。

想像を超える素晴らしい作品とキム・ギドク監督に感謝と哀悼を捧げ、再び監督の作品を観続けていきたいです。
たむ

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