不在

マンマ・ローマの不在のレビュー・感想・評価

マンマ・ローマ(1962年製作の映画)
4.6
長年娼婦を続けてきたマンマ・ローマ。
恐らくは戦争の影響で、そうすることでしか生きられなかったのだろう。
彼女は離れて暮らしていた息子を引き取る際に、そんな後ろめたい仕事にけりをつけ、市場で商売を始める。
もちろん娼婦の頃よりも収入は減ったことだろう。
そのせいなのか息子はまともな教育も受けられず、仕事にも就けない。
息子のために娼婦を辞めたはずが、却ってそれが息子の不幸に繋がってしまっている。
しかし胸を張って息子と向き合いたいマンマ・ローマに夜の仕事に戻るという選択肢はなく、貧しいながらも子供と二人で慎ましく生きていこうとする。
そんな彼女のもとに、過去の因縁が襲いかかってくるのだった。

彼女のような人達は、自ら選ぶことすらできずに社会の下層に生まれ落ち、どう足掻いてもそこから登ることができない。
今の生活、今の人生から抜け出すためには、一体どうすればいいのだろう。
彼女に優しくしてくれるのは同じ界隈の友人だけだし、息子と仲良くなる人達もそうだ。
上にいる人間は下を見ない。
パゾリーニはここで、神すらも人々を見ていないと言いたげだ。
不在

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