Koshii

明日、君がいないのKoshiiのレビュー・感想・評価

明日、君がいない(2006年製作の映画)
3.8
原題は『2:37』

邦題の『明日、君がいない』
見終わった後に、声に出して読んでみる。これ以上に、本作を形容できる言葉も文章も見当たらない。

6人の高校生。それぞれが抱える悩みや葛藤。「お前らには、この苦しみがわからないだろ」と誰もが胸に秘め、それでも青春の中で生きる。

ダークとか、アングラとかではなく、青春映画の裏に張り付いてる「隠」を、暗いところに堕ちていく彼らを丁寧に描く。

背中が気持ち悪くなるような、ゾワっとする不快な音、BGM。

何かが崩壊するまでの時間をカウントダウンするように、その音の不快感は大きくなる。

2:37。それは、訪れる。


「この映画が、私だけでなく
多くの人の命を救うことを願ってやまない。」 監督 ムラーリ・K・タルリ

以下、ネタバレを含みます。












見終わった後に訪れる悲しみを、すんなりと受け入れる自分がいる。

こんなにも「隠」を美しく感じさせる映画は初めてだったから。

ケリーの懸命なSOSは潰される。
周りを見れなくなるほど、自分に精一杯な彼らには、それが見えないから。

ケリーの差し伸べる手も、そこには届かなかった。せめてもの願いすら、悩みという壁によって遮断される。

優しい彼女だからこそ、訪れてしまった悲劇。見落とされてしまった命。

彼女が自殺することでやっと認識する。
「君」を認識する。

明日、君がいない。

意識することでようやく、彼らの背景だったケリーが、「君」という存在になる。


昨日、ケリーはいない。
今日、ケリーはいない。

明日、君がいない。


観終わってしばらく経って、思い出す。
何度も、何度も思い出して、その度に考えさせられる。

ずっと心に残り続ける作品だし、大事な一本。
Koshii

Koshii