櫻イミト

やさぐれ姐御伝 総括リンチの櫻イミトのレビュー・感想・評価

4.0
同年の鈴木則文監督「不良姐御伝 猪の鹿お蝶」(1973)の続編。石井輝男監督の東映エログロ系の最後の作品。

大正時代の神戸港。猪の鹿お蝶(池玲子)は女殺し事件に巻き込まれ、地元ヤクザの譲二に救われる。共に動いていくうちに神戸の麻薬密売ルートが女たちを食い物にしていることを知り怒りに燃えるお蝶。神戸で出会った女スリの親分・半纏ババアお定、ズべ公グループ紅衿団の長・キリストの好美と力を合わせ、巨悪に挑むのだった。。。

映像、シナリオ、美術とも大変に好みで面白かった。石井輝男監督作品では「徳川いれずみ師 責め地獄」(1969)がマイベストだったが、完成度は本作がベストだと思う。東映でのエログロ系ラストということを監督自身も意識していたのではないだろうか。オープニングの全裸殺陣、縄を使った拷問シーン、江戸川乱歩的な迷路街、死体ホルマリン漬けプールなど、石井輝男ワールドの足跡を観ているようだった。虐げられた女たちが手を取り合って悪を倒す様は胸熱で、異常性愛路線で酷い目にあってきた女たちへの贖罪のようにも感じた。

東映ポルノ女優第一号の池玲子にとっては、デビューから組んできた鈴木則文監督以外での初主演作となった。意外にも本作が最も美しく映っていて芝居も上手く見えた。鈴木監督の元で鍛えられた成果と、石井監督の本作への熱意、両方が発揮されたのだと思う。
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