垂直落下式サミング

決断の垂直落下式サミングのレビュー・感想・評価

決断(1958年製作の映画)
4.0
強盗殺人事件の犯人を捕まえようとする連邦保安官補が、容疑者の潜伏先と思われる西部の町にやって来て、彼の顔を知る関係者からの証言を得て逮捕に踏み切ろうとするが、男は町の人気者になっていて…。ハングマンと呼ばれる男が、法と人情の狭間で揺さぶられる西部劇の秀作。
三人の主犯格たちはすでに捕っていて、残った男の処刑も近かった。刑が執行されればいまだ見つかっていない四人目を裁けなくなるため、潜伏先と思われる小さな町に連邦保安官がやって来るのだが…というストーリーで、西部劇というよりは刑事・探偵ドラマのような雰囲気だった。
面白いのは、ロバート・テイラー演じる冷徹で手抜かりのない主人公の心情の変化が、実に自然な流れで描かれていること。ヒロインや若い保安官は、彼の孤独に理解を示してくれるが、任務を遂行しようとすれば、男を庇いたてする住民たちの非難の眼が背中に刺さる。そのうちに、主人公のなかに躊躇いが生じていく過程はドラマとして見ごたえがあった。
法と人情のあいだで葛藤するのは、西部劇だからこそ。現代人の僕らは、無実であればむしろ裁判を受けた方が身の潔白を証明できるはずなのでは?と、甘いことを考えてしまうが、ここは暗黒大陸アメリカである。取り調べで得た証拠や証言はオマケみたいなもんで、陪審員の印象で罪が決まってしまう。馬を用意しただけなんて通用しないのだ。
逃げていく男、二発の弾丸は空を切る。理解者でいてくれたヒロインと保安官だけが、主人公の意図に気づいているような様子がよかった。不幸な人生にはセカンド・チャンスが必要だと、各々の決断はそういう希望を見せてくれる。
たとえ犯罪者だとしても親しい友人を助けようとする群集の人情と、悪いやつは問答無用で首吊っちまえっていう陪審員たち、どちらも正義の本質。何に準ずるか、それは各々が考えればいい。
よくできたシステムも運用するのは人間だ。法によって善がなされない場合もある。機械だって定期的にメンテナンスしなければたちまち傷んでしまう。異音のする歪んだ法に油を差すことも、時として必要な仕事。
法の精神に血の通わせることで、こころを取り戻したハングマン。それでメデタシメデタシでいいのに、コイツちゃっかりオンナ手に入れてやんの。タヌキがよ!
整った顔と美しいスタイルで魅了するティナ・ルイーズは、入浴シーンなどで劇中何回も半裸になってくれる由美かおる枠。途中で、「ちゃんとした服を買え」と主人公が金を渡すことで、しっかり七変化を可能にしている。どの服装も巨乳が強調されていてスバラシイ。