ハリマ江戸

壬生義士伝のハリマ江戸のレビュー・感想・評価

壬生義士伝(2002年製作の映画)
4.5
浅田次郎が描く悲しみを背負った男。
素晴らしい。
とかく武士は、滅びの美学で描かれがちだとが、『死んではならない。』
そんなことを言う武士もいたんだ。

中井貴一、佐藤浩市、夏川結衣。強力な役者達が演じる時代劇。

新撰組というと、近藤、土方、沖田。
個人的には、二番手の永倉、斎藤、原田が好き。
吉村って何番手?
田舎侍の集まりが、旗本にまで登りつめ、破滅していく新撰組を、客観的にみているのが、乙。

死に急ぐ斎藤と必死に生きようとする吉村を対照的に描き、ストーリーは展開していく。

死しても心に残る、そんな人間って素晴らしい。

あらすじ〜〜
明治32年東京。
とある診療所へ。孫の風邪の治療のため訪れた老人。元新撰組の斎藤一(佐藤浩市)。
そこには一枚の写真が・・・。吉村貫一郎。

幕末。
吉村は新撰組に入隊。近藤の面前での永倉との立ち合いで認められ、隊の剣術指南役となる。
斎藤は、鼻持ちならぬと吉村を斬ろうとするが、互角。
「死にたくないから人を斬る」という。

初めての隊士処分のため介錯の任。
見事に仕上げる。褒美の金を吊り上げる奇妙な男。

南部盛岡藩は飢饉に見舞われ、
剣術を教えたていた彼は、ある日、脱藩。吉村の家族は藩を追われた。
新選組に入隊した吉村は、仕送りを続けていた。
時流により新選組は、旗本に取り立てられ、絶頂期。

新選組の分裂。伊藤甲子太郎が隊士を引き連れ分派。

谷三十郎の死。闇討ち。斎藤の仕業と見抜く吉村。口止め料を求める。

伊藤甲子太郎一派の粛清。沖田の喀血。
落日の新選組。

大政奉還。鳥羽伏見の戦い。
刀の時代の終焉。度重なる敗走。

人は、たかがくそ袋。吉村に影響され斎藤の心が懐柔されていく。

幕府軍の前に錦の御旗を立てた官軍。旧幕府軍は賊軍となる。
幕府の武士たる吉村は単身斬りこむ・・・。

吉村の旧友大野は大阪付け、南部盛岡藩の采配が任されていた。
中立、落ち武者を受け入れぬ。
そこに現れる吉村。武士の情け、裏庭での切腹を。
大野は、旧友を助けたい思いと藩を守る責務の天秤にかけられる。
最後に大野自ら握り飯を用意、故郷南部の米で。
吉村は、息絶える前、倒れる懐から零れ落ちるお金。
その使途と家族を思い出す。

「地獄にも極楽にもいかない、お前たちと一緒だ、片時も離れない・・・。」
遂に吉村は切腹して果てる。

遺髪とその最期を家族に伝えられた。

吉村に腹を切らせた大野は、官軍に闘いを挑み、戦死。
吉村の息子も函館の戦地へ。
「大好きな父を一人で逝かせられない」と。
そして、大野の息子である町医者は吉村の末娘みつと結婚していた。
診療所に飾ってあった吉村の写真、町医者の義理の父、みつが持っていた吉村の写真。

「新選組はさぞ強かったのでしょうな。」
「明治には無用の輩ですな・・・。」
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