浅田次郎が描く悲しみを背負った男。
素晴らしい。
とかく武士は、滅びの美学で描かれがちだとが、『死んではならない。』
そんなことを言う武士もいたんだ。
中井貴一、佐藤浩市、夏川結衣。強力な役者達が演じる時代劇。
新撰組というと、近藤、土方、沖田。
個人的には、二番手の永倉、斎藤、原田が好き。
吉村って何番手?
田舎侍の集まりが、旗本にまで登りつめ、破滅していく新撰組を、客観的にみているのが、乙。
死に急ぐ斎藤と必死に生きようとする吉村を対照的に描き、ストーリーは展開していく。
死しても心に残る、そんな人間って素晴らしい。
あらすじ〜〜
明治32年東京。
とある診療所へ。孫の風邪の治療のため訪れた老人。元新撰組の斎藤一(佐藤浩市)。
そこには一枚の写真が・・・。吉村貫一郎。
幕末。
吉村は新撰組に入隊。近藤の面前での永倉との立ち合いで認められ、隊の剣術指南役となる。
斎藤は、鼻持ちならぬと吉村を斬ろうとするが、互角。
「死にたくないから人を斬る」という。
初めての隊士処分のため介錯の任。
見事に仕上げる。褒美の金を吊り上げる奇妙な男。
南部盛岡藩は飢饉に見舞われ、
剣術を教えたていた彼は、ある日、脱藩。吉村の家族は藩を追われた。
新選組に入隊した吉村は、仕送りを続けていた。
時流により新選組は、旗本に取り立てられ、絶頂期。
新選組の分裂。伊藤甲子太郎が隊士を引き連れ分派。
谷三十郎の死。闇討ち。斎藤の仕業と見抜く吉村。口止め料を求める。
伊藤甲子太郎一派の粛清。沖田の喀血。
落日の新選組。
大政奉還。鳥羽伏見の戦い。
刀の時代の終焉。度重なる敗走。
人は、たかがくそ袋。吉村に影響され斎藤の心が懐柔されていく。
幕府軍の前に錦の御旗を立てた官軍。旧幕府軍は賊軍となる。
幕府の武士たる吉村は単身斬りこむ・・・。
吉村の旧友大野は大阪付け、南部盛岡藩の采配が任されていた。
中立、落ち武者を受け入れぬ。
そこに現れる吉村。武士の情け、裏庭での切腹を。
大野は、旧友を助けたい思いと藩を守る責務の天秤にかけられる。
最後に大野自ら握り飯を用意、故郷南部の米で。
吉村は、息絶える前、倒れる懐から零れ落ちるお金。
その使途と家族を思い出す。
「地獄にも極楽にもいかない、お前たちと一緒だ、片時も離れない・・・。」
遂に吉村は切腹して果てる。
遺髪とその最期を家族に伝えられた。
吉村に腹を切らせた大野は、官軍に闘いを挑み、戦死。
吉村の息子も函館の戦地へ。
「大好きな父を一人で逝かせられない」と。
そして、大野の息子である町医者は吉村の末娘みつと結婚していた。
診療所に飾ってあった吉村の写真、町医者の義理の父、みつが持っていた吉村の写真。
「新選組はさぞ強かったのでしょうな。」
「明治には無用の輩ですな・・・。」