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壬生義士伝のRyuのレビュー・感想・評価

壬生義士伝(2002年製作の映画)
3.8
南部盛岡藩を脱藩して、新選組に入隊した吉村貫一郎。温厚な人柄でありながらも、見事な剣の腕を持つ彼は、その腕をふるって人を斬り続ける。全ては盛岡にいる家族たちを養う金を得るためだった。

やっぱり新選組モノはおもしろいなぁ。男たちのアツい想い、裏切りや駆け引き。しかしこの吉村貫一郎はそれらにはそこまで当てはまる人物ではありません。家族への愛に溢れており、義を重んじる性格で、まぁ出来た人なんですが、新選組という組織では異彩を放つ存在ですね。銭なんていらねぇ、いつ死んでもいい、なんて気持ちで戦う男たちも潔くてカッコいいんですけど、家族を守るために、何言われようと自身の生き様を真っ当する姿も、侍としてだけではなく、1人の漢としてめちゃくちゃカッコよかったです。
この吉村貫一郎という漢の生き様をただ語るだけでも絵になると思うんですが、これを吉村とは正反対な斎藤一と対比するようにして描いており、それぞれのキャラクターがより際立っていたと思います。だからこそ鳥羽・伏見の戦いでの斎藤の吉村に対する態度とかにはグッとくるものがありましたね。この斎藤一も吉村とは違うカッコよさがありましたね。気に食わん奴はぶった斬ったり、口も悪いし、態度もよろしくない。でもこいつなりに愛する者を守ろうとしてるので、まぁ不器用なんでしょうかね。吉村・斎藤 両者ともにすごく哀愁漂う渋カッコいい漢だったなぁと思いました。
そんな2人を演じた中井貴一に佐藤浩市。佐田啓二、三國連太郎 と、共に名優を父に持つ二世俳優ということで色々苦労もされてきたことと思います。そんな2人の演技合戦はまぁ見事なものでした。プライベートでも親交があるらしく、息の合った掛け合いにも納得です。
アクションシーンも非常に見応えがあり、役者陣たちの見事な殺陣、飛び散る血しぶき、刀と刀がぶつかり合う音、男たちの怒号。画面を超えて熱気が伝わってきました。堺雅人の沖田総司も妙に良かったなぁ。
脚本・演技・演出どれも良く出来ており、終盤は思わず涙ぐんでしまいました。日本アカデミー賞 最優秀作品賞受賞も納得の作品でした。
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