爆裂BOX

デス・フロントの爆裂BOXのレビュー・感想・評価

デス・フロント(2002年製作の映画)
3.6
第一次大戦真っ只中のヨーロッパ西部戦線。16歳の少年兵シェイクスピアの所属するY中隊はドイツ軍の塹壕占拠に成功し、敵兵一人を捕虜にするが、やがて次々と奇怪な死を遂げていく…というストーリー。
ジェイミー・ベル主演の1917年の第一次大戦中のヨーロッパ西部戦線のドイツ軍の塹壕を舞台にした戦争ホラーです。監督は「処刑島」や「サイレントヒル・リベレーション」のマイケル・J・バセットです。本作がデビュー作ですね。
冒頭は結構激しい戦闘描写が描かれて本格的な戦争映画っぽい感じで始まります。そこから霧の中を彷徨うY中隊がドイツ軍の塹壕に辿り着くも、そこにいたドイツ兵は何故かこちらには銃を向けず塹壕の奥にばかり銃を向けて「ここからさっさと逃げろ!」と此方に言ってくるという展開が不穏さを感じさせて良いですね。
そこからは特別派手な描写や展開はないですが、雨が降り続き、泥がぬかるみ、あちこちにドイツ兵の死体が転がる塹壕というじめじめとした不快さを感じさせるシュチエーションの中で異常な状況に見舞われ狂っていく兵士たちの姿にひきつけられましたね。幽霊屋敷物の舞台を塹壕に変えた感じの作品ですね。
泥にまみれた死体だと思ったら、目を開いてゆっくり動きだしたり、有刺鉄線を巻かれて通路に立つ死体や、兵士の背後でその死体が動き出したりといった描写も地味ながらツボを押さえた描写だと思います。後半の「トレマーズ」の様に地面を掘り進む「何か」に兵士が引きずり込まれたり、地面からにょきにょき現れた有刺鉄線に身体貫かれる兵士などの描写も良い感じでした。塹壕の通路などを爆破すると唸り声の様な音が響いたり、屁騎兵の声や爆撃の音だけが響くシーンも不気味で良かったです。
後半ではこの状況と「何か」によって狂わされた兵士たちが同士討ちを始めるこの手の戦争ホラーとかではよくある展開になっていきます。
ジェイミー・ベルは凄く若いですけど、戦場で怯えるばかりだった少年兵からやがて自分で考えて決断し行動する男に成長していく様を上手く演じてたと思います。終盤では顔つきも変わってたように感じます。「ロード・オブ・ザ・リング」でゴラムを演じてたアンディ・サーキスが粗暴で残虐で後半狂人と化す兵士を演じてますがハマってました(笑)
他の兵士達もそれなりにキャラ立ってましたが、暗くて泥だらけになったりして見分けがつきにくい所もありましたね。
グロ描写は殆どないですが、ずっと寝たきりだった兵士の足がネズミの群れに食われているシーンはエグかったですね。
この塹壕に潜んでいた「何か」が何だったのかや捕虜になったドイツ兵の正体などはっきりした答えは示されず、観る人に解釈委ねてる感じですが、最初の戦場シーンからの霧の中を進むY中隊に切り替わるカットの妙な不自然さや、無線から聞こえた「Y中隊は全滅した」という言葉等からここは煉獄だったのではないかと個人的に思いましたね。最後まで善良さと自分を見失うことなく試練を耐え抜いたシェイクスピアだけが出れたんじゃないかな。最後の兵士達もシェイクスピア以外のY中隊がループしたように思えます。
派手なシーンは少ない地味な作品ですが、個人的には良作だと思います。