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青の炎のmegurosのネタバレレビュー・内容・結末

青の炎(2003年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

蜷川幸雄監督、二宮和也主演。※この並びを思い浮かべると「検察側の罪人」でニノと対峙した松倉を演じた酒向芳が蜷川幸雄に似ていたように思えてきた。原作は貴志祐介。

母親の再婚相手で既に5年も前に離婚した曽根が家に住み着くようになり、17歳の長男・秀一は家族を守るために曽根の殺害を計画する。”人を殺さなければならない事情”を描いてはいるが、秀一は曽根だけでなく、その後に同級生も騙して殺しているわけで、元々の事情に対してその罪が大き過ぎる。人を殺すにも想像力が必要だと学校では語り、地下室のガレージ(この部屋好き)に置かれた空の水槽に入って殺害計画を練る程度の歪みではなく、共感を寄せていた視聴者を決定的に裏切るような悪の表情をラストに見せた方が良かったのではないか。

ちなみに、青の炎は、使用済み核燃料や原子炉の炉心など非常に強い放射線を出す物質の周辺で見られる青白い光(チェレンコフ現象)のこと。つまりは人間の内側に宿る、青白い殺意の炎。

公開当時観た時はあまり気にならなかったが、松浦亜弥が都合のいい”理想化”された女性になっているのが気になった(松浦亜弥だけでなく妹も母親も古い女性像)。家に呼ばれたのに「帰れよ」とカバンを外に投げられ追い出されたはずなのに、シャッターを閉めきったガレージの部屋の中に突如登場するシーンでは、まず帰っていなかったことに驚くのだが、もしかしたら慰めてくれる都合の良い女性として描かれていることに嫌悪を示すのではなく、既に正気を失っていた秀一が見た幻視として捉えられれば納得しやすいのかも(...さすがに厳しいか)

曽根役に山本寛斎、刑事役に中村梅雀、コンビニ店員の先輩に唐沢寿明、私書箱の男に竹中直人。美術室の窓から寺が見える鎌倉高校のロケーションがとても良かった。
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