Masato

青の炎のMasatoのレビュー・感想・評価

青の炎(2003年製作の映画)
3.9

鬱映画特集

鬱ランク C-

二宮和也と松浦亜弥出演による映画だが、蜷川幸雄監督なこともあってかアイドル映画とは思えない切なすぎる映画になっていた。

自堕落で乱暴をはたらく義父が離婚後も家に居座り、法的な事情もあって追い出せないなかで、主人公の櫛森秀一が完全犯罪を目指して殺人を犯すというドラマ。

なんとも救えない遣る瀬無い物語だった。大人とは違って17歳という年齢に耐えることは非常に難しい。彼に殺しという選択肢を与えてしまった社会に憂いを感じる一方、この完璧ではない社会では常にこういった綻びが生まれてしまうのも必至。

殺しを選択してしまった彼はもう自分を制御できることができなくなり、徐々に倫理観が崩れていく。その末に家族を自分の犯した罪から守るべく下した最後の決断もなんとも救えない。殺されるに値する人間はいるけど、絶対に殺してはいけない。その複雑さは簡単に言葉にできない。

リリイ・シュシュのすべてにも通ずる2000年代の邦画にしかない、のどかな美しさと陰鬱さが同居している独特な空気感を見事に捉えられている。松浦亜弥演じる紀子の実在感のない存在や青に象徴されるシーンなどの神秘的な雰囲気が時代の空気感とマッチしていて非常に良かった。
Masato

Masato