たにたに

ハスラーのたにたにのネタバレレビュー・内容・結末

ハスラー(1961年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

【ルーザー】2022年165本目

ポールニューマン演じるエディはビリヤードの達人。実力を隠し、賭けで金をせしめる詐欺師、いわばハスラーだ。
冒頭のシーンでは、酒に酔ったフリをして賭け金をかっさらう。

より強いやつを倒して名声を得るために、彼はミネソタ・ファッツへと挑む。
JTSブラウンをストレートで嗜みながら、勢いある青年は勝利し金を掴んでいく。

ビシッとスーツを着こなすファッツは、エディの才能に感心しながらも、余裕のある大人のゲーム展開へと持ち込み、長期戦の末、最後には全財産を奪ってその場を後にする。
ルーザー(負け犬)の称号を与えられたエディの行き着く果てには、苦悩と破滅の未来が待っていた。


エディとファッツの間にある差は何か。
全財産を叩いて、勢いと若さ有り余るエディは、自己表現の行き場を模索している。いわばアイデンティティの確立が自身の崩壊へと向かうことで自分の存在意義を見出している。
ファッツはその点、一歩引いて物事を俯瞰している。大人の余裕とはこうゆうことなのだと思う。

エディが惹かれる女性サラは、1人で朝から酒を飲み、週に2回大学へ行って、あとは何をするわけでなく酒を飲む。を繰り返す。足の悪いサラも自己の行き先を見失っている。しかし、彼女はエディを愛することを人生の選択肢とした。"愛してる"という言葉を迷いなく使う彼女に対して、エディはそれに答えることができなかった。
"愛してる"という言葉はエディにとっては重い言葉ではなかろうか。
サラの"愛してる"は与えるばかりで返答がない。受け取り手のない愛の行き着く先は、自身の死を持った崩壊であった。エディは彼女が死んで初めて"愛してる"と語りかける。そう、もう遅いのだ。

エディにはその余裕がない。

この映画には人生の教訓が詰まっている。
たにたに

たにたに