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親切なクムジャさんのLudovicoMedのネタバレレビュー・内容・結末

親切なクムジャさん(2005年製作の映画)
2.3

このレビューはネタバレを含みます

《法では満たせない遺族の正義を企てたクムジャさんの懺悔を振り返る娘》

そんなクムジャさんをあなたは許せますか?と復讐についての論文を3作品創り上げた最後の宿題としてパクチャヌクは問いかける。『復讐者に憐れみを』で全てを失い復讐しかなくなった二者の対峙を感情移入/同情させるテーマで描き、続く『オールドボーイ』はさあ、復讐始めるゼと気合い入れた主人公が実は壮大な復讐劇をされる側だった、という視点のひっくり返しが待っていた。その中で法による懲役のメタファーを監禁に絡め、出所したにしても遺族に対し真の意味で償うにはコレほどの代償と痛みが必要なのだよ、と贖罪をテーマにとてつもない復讐計画から暗示して魅せた。そんな贖罪に身を捧げたチェミンシクを今回の映画にも復讐対象者としてスライドさせ壮大な復讐計画を行う側の視点転換から今度は向き合う。

クムジャは天使のようで、皆んなに親切で、、、でも裏の顔もあるよと自己紹介パートをおよそ映画の起、承を割く長尺で語る。"天使"が通り過ぎる時間を終盤に余白的に用意された尺から画面に映る人物らの感傷的な行動を眺めながら、この復讐をどう感じたか?と観客に問う。このような総括的使い方にはパクチャヌクの鋭さに改めてお見それする。
他にも、タイトルバックの贅沢さが何より最高であった。007のタイトルバックみたいに官能と血が混ざり合うここで、もう物語をなぞっている。純白と血液の対比やアイシャドウから落ちる涙を鑑賞しながら、これだけでよし見よう!とスイッチが入る掴みが完璧でした。

ただし本作は苦手分野だった。意図的に制御され尽くした画面構築は箱庭効果を高めることで地に足つく現実から童話的に浮き立つ作風が込められておりアプローチとしては良いものの、中島哲也監督タッチガッツリで徹底的に無理だった。ユーモアやバイオレンスも何故かナカテツ感ビンビンでうわぁってゲンナリしたしスピード感とテンションが同じに保たれた話運びのせいで衝撃パートもメリハリがない。マクガフィンのように捌かれる登場人物やカットを割りたくない欲で一連の流れに魅せる演出とかもダサい。

とはいっても被害者の会あたりでそれなりに興味を持ち直し、法の正義か遺族の正義か?で苦悩する選択肢が『ヘイトフルエイト』で言及された、賞金首は死刑執行人の手で吊るすのか?西部の流儀に乗っ取って遺族が仇を取るか?の処置について本作は儀式の様なフィールドから見せてくれる。
復讐を終えたクムジャがキツネの表情的に笑ってるようにも怒ってるようにも悲しんでるようにも見える顔が全てを語っているようで。

全体的にパクチャヌクが手癖だけで作った映画であるようで、それでも収穫は少しあり楽しめた。
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