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親切なクムジャさんの消費者のレビュー・感想・評価

親切なクムジャさん(2005年製作の映画)
4.7
・ジャンル
サスペンススリラー/ノワール/ドラマ

・あらすじ
6歳の男児を誘拐及び殺害した罪で自首した女性、クムジャ
その残忍な手口や事件当時の20歳という若さが取り沙汰される一方で彼女はその美貌もまた注目の的だった
そして13年6ヶ月の時を経てクムジャは出所
しかしそれは復讐という形で成される贖罪の始まりに過ぎなかった
彼女の罪は着せられた物、標的は真犯人である
服役当初からクムジャの計画は始まっていた
出会う人々はその狡猾な人心掌握術によって彼女に心酔
そんな者達を出所後のクムジャは手駒として利用、真犯人へと少しずつ忍び寄っていくのだがその先にはより深い闇がまだ隠されていて…

・感想
パク・チャヌク監督による“復讐三部作”の最終作
今作には1作目「復讐者に憐れみを」、2作目「オールドボーイ」それぞれのメインキャストがカメオ出演している

「復讐者に〜」は未鑑賞なので全体を総括した感想は語れないものの2作目とはまた違ったグラデーションの様に少しずつ「親切なクムジャさん」というタイトルに新たな意味が加わっていく展開は陰惨ながら良い物だった
単なる復讐に終始するのではなく加担してしまった事への贖罪であり、出会ってきた人々の利用も独善の様で救済的側面も感じ取れてその複雑さが魅力的
終盤の被害者遺族達との復讐も実行までスムーズに進まず処刑参加者と非参加者、金持ちと貧乏人など壁が描かれていたり一枚岩じゃない感じも生々しい

それらと並んで印象に残ったのがペクに銃を向け通訳として利用し、ジェニーに彼女を手放した理由を説明する場面
良く思いついたなこんなクソヤバ描写…w
まだ3作しか観てないけどパク・チャヌク監督の陰湿で狂気的な描写、かなり好みだ…
それでいてラストは何よりもクムジャにとって救済となる綺麗な物なのもイイ…

個人的な思想として重罪を犯した人々に死刑推進的な言葉を集団で浴びせるネット上の風潮などには嫌悪感が強い
それでも今作がスッキリして観られたのはあくまで復讐を当事者と協力者だけで完結させていて社会を巻き込む様な事もなく最後までそれぞれの個人的な事として描き切っていた事が大きいと思う
復讐者を倫理側に配置せず、それもまた罪であると扱う作品ってありそうで多くない感じがするので貴重な作品と感じた

あと前作に続いて今作でも日本愛の感じられる場面がしれっとあったのも日本人としては嬉しかった(決して新しい作品ではないので)
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