TaroYamada

親切なクムジャさんのTaroYamadaのレビュー・感想・評価

親切なクムジャさん(2005年製作の映画)
3.0
パク・チャヌク、”復讐”3部作の内の1作
主演のイ・ヨンエが素晴らしく、話の展開も想像を超えた、2時間満喫出来る良作

今作の成功はイ・ヨンエが全て、そう言ってもおかしくない程素晴らしい
”チャングム”の印象を持って観ていると良い意味で想像を遥かに超える存在感を画面上で観せてくれる

或る理由により収監され、13年間囚われの身だった女の執念の復讐劇、彼女は人間が持っている全ての感情を使ってそれを現してくれる

一番は終盤間近のクローズアップになるシーン

泣きながら笑っているのだが、決して声を出す訳でもなく、噛み殺すような佇まいで居る
今まで起こった事を思い返しているのだろうか?僅か十数秒の間の表情の変化なのに、泣き笑い、又泣き、と幾重にも変わっていくのだ
その凄みがある心の移り行きはまさにクムジャが憑依した瞬間の様に思えた

劇構成は終盤、まさかこうなるとはという展開が待っていた
思い出すのは「12人の怒れる男」「オリエント急行殺人事件」
良くこの展開を思いつくなと考えたが、これは過去の映画の良質な引用なのだとも感じた

全体の構成も平板に単純時系列で並べる事無く、細かく過去、現在を行き来する事でなぜ彼女が「”親切な”クムジャさん」と呼ばれる事になったのか丁寧に描かれている

細かく時制が変わったり、時にメタファーが見える効果として現しているシーンもあり分かりにくくなるシーンもあるが、これは監督の個性だろう

監督自身、三部作を意識した演出として過去2作で出演した俳優を多く使っているのも特徴
チェ・ミンシクは「オールド・ボーイ」を観た人にとってはその配役自体ある種の皮肉の様に感じられるだろうし、
ソン・ガンホは言われなければ分からない程、こんな所で出て来るのか?といった配役で驚く、
ユ・ジデは…とにかく観て欲しい、観れば私と同じ驚きを感じて貰える筈だ

暴力シーンは強調されるが、然程強烈には感じない
むしろ人間としての切なさ、哀感を奇妙な形ではあるが描いたヒューマンドラマだと思う

イ・ヨンエ、今は家庭中心の生活で休業中との事だが、また是非彼女の新作をいつか観てみたい